『居場所。』 大崎洋著(1650円〈税込み〉/サンマーク出版)/吉本興業ホールディングス会長・大?洋による「生きづらさ」の処方箋。自分や大切な人たちの"居場所"をつくるために心がけてきた12の「しないこと」をつづった初の単著
『居場所。』 大崎洋著(1650円〈税込み〉/サンマーク出版)/吉本興業ホールディングス会長・大?洋による「生きづらさ」の処方箋。自分や大切な人たちの"居場所"をつくるために心がけてきた12の「しないこと」をつづった初の単著

■人生を変えた瞬間

 逆に、ダウンタウンが大崎にとっての居場所でもあった。

「そうですね。彼らに出会ったころは僕もまだ若かったですけど、会社で落ちこぼれて、NSCという場に配属されて。周りのみんなは上を見て、やすしきよしさんや笑福亭仁鶴さん、桂三枝(現・文枝)さん……それから飛ぶ鳥を落とす勢いだった紳助・竜介や明石家さんまのような、売れてるタレントのマネジャーをしたがっていた。それなのに僕は上を見ず、下を見ていた。急ごしらえした稽古場で、やることもなくてうつむいて掃除をしていて、パッと顔をあげたら、汚い顔した目つきの悪い松本くんと浜田(雅功)くんがいた。『なんか暗そうな、悪そうな奴らやな』と思って、なんとなく目をそらして……。考えてみれば、それが人生を変えた瞬間かもしれません。そんな出会いでした」

 大崎が言う下を向いていたからこそだったという運命的な出会いは、ラッキーでしかなかったという。

「だけどそういう出会いというのは、誰にでも訪れていると思うんです。僕はたまたまそれに気づけただけで、気づけないままの人がほとんどなんじゃないかと思います」

 ダウンタウンともう一人、という三人四脚のような日々が始まる。

「だいたい松本くんの頭の中でネタができていて、それを稽古場で形にしていく。僕も暇でしたので、紙と鉛筆を持ってきて書き留めて、『こうしたほうがええんとちゃいます?』なんて言ったりしたこともありました。たしか『ローリングサンダーマン』と『森の妖精』というコントだったと思います。最初の2年ぐらいは言うことを聞いてくれましたけど、そのあと40年ぐらい、一切聞いてくれません(笑)」

■意識したのは『遺書』

 その後、押しも押されもせぬスターとなったダウンタウン。そんななか、1993年7月に「週刊朝日」誌上で松本人志の連載「オフオフ・ダウンタウン」がスタートする。

「松本くんに、ことあるごとに『何か書きいや』と言ってたんです。最初はずっと『いやいや、いいですわ』と言ってたのですが、ある時期から『僕も言いたいことありますしね』と言ったので、じゃあ、どこか探してくるわ、連載なら週刊誌がええかな、週刊誌やったら一番かしこそうな『週刊朝日』がええかなって」

 連載を一冊にまとめた『遺書』は累計250万部を超える大ベストセラーとなり、続編にあたる『松本』も200万部の売れ行きをみせた。

 大崎にとって、『遺書』は今なお大きな存在だという。

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