
これまでも甘くないプロテインは需要があったが、開発するには技術的な課題があった。
「最も難しかったのは、たんぱく質の含有量を増やすことと、おいしさのバランスを取ることでした」(河野さん、以下同)
1食でたんぱく質8グラムが取れる高たんぱくスープがあるなかで、プロテインと位置づけるからには20グラムのたんぱく質を含有したいと考えた。
だが、たんぱく質の粉はえぐみがあるとされるが、同社はスープの味でカバーすることに挑戦した。
「味の感じ方を計算して、原料を配合しました。みそ汁はおだしの風味で味付けして、青臭さをマスキングしました。コーンクリームは、コーンの味がしっかりするように弊社のスープの味づくりの技術を生かしています」
たんぱく質の粉末は、独特のざらつきがある。たんぱく質をたくさん入れると、粉っぽさが強まり、味覚に影響を与える。
粉っぽさとの闘いの突破口になったのは、半世紀前に生まれた味の素のクノールのカップスープの技術だった。独自技術を応用して、溶けやすくした。一般的なスープの粉末は大きさに差があり、それがダマになる原因になるという。粉末がしっかり溶ければ、ざらつきが気になりにくくなるというわけだ。さらに、熱によりたんぱく質が固まる熱変性を起こす課題があったが、たんぱく質の種類の選定からこだわり、1年かけて開発した。
河合さんは自らの経験も交えて、メリットについて次のように話す。
「学生時代からアーティスティックスイミングに打ち込んでいまして、運動直後にプロテインを飲んでいました。ですが、プロテインを飲んでお腹が膨れたまま、昼食を取るときは、しんどい思いがありました。これなら無理なく食事と一緒に摂れます」
みそ汁は大豆が原料のソイプロテイン、スープは乳由来のホエイプロテインを使用。食事との親和性は高いという。
河野さんのアドバイスをもとに、レンジで温めた牛乳に、プロテインスープ コーンクリームの粉、粉チーズを混ぜて、ほんの少しオリーブオイルを垂らしてみた。すると、本格的なコーンクリームの味になった。
「私は食感のアクセントになるので、コーンクリームにクルトンを入れています。リゾットにアレンジするのもおすすめです」
好みの調味料で味を調整できるし、具材を入れるとさらにたんぱく質やそのほかの栄養素も摂れる。アレンジの幅が広いのは、食事系だからこそだろう。
甘くないプロテインは、たんぱく質摂取の新しいスタンダードになるかもしれない。
(AERA編集部 井上有紀子)
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