難点があるとすれば、山小屋の予約が難しいことだ。コロナ禍以降の定員減や通行時間規制の影響で早めに予約を入れる人が増え、今シーズンの山小屋の予約は5月の時点でかなり埋まっている。複数の日程を仮押さえしている人もいると見られ、今後キャンセルが出る可能性は高いが、自由に休みを調整できない人だと希望する日に予約を取れないかもしれない。
六合目の山小屋が「穴場」
そこで佐々木さんが勧めるのが、五合目や六合目の山小屋・宿泊施設に泊まる方法。富士山の各ルートは六合目付近にも山小屋があるが、標高が低い分、山頂で御来光を目指す人の選択肢にはなりづらい。いわば「穴場」で、予約が取りやすいメリットがある。標高は2500メートル前後なので、3000メートルを超えるような小屋と比べてかなり就寝しやすいのも高ポイントだ。余裕があれば、泊まる予定の小屋よりも20分~30分上まで登って戻ってくると、より高所順応が進んで快適に眠ることができる。

「ただし、標高が低い分、日の出後の出発になると時間的にややきつくなります。空が多少明るみ始める3時ごろに出発するといいでしょう。2時間ほど登ったところで日の出を迎え、そのあとは七合目や八合目の山小屋前で御来光を見た人と同じような行程で山頂に向かいます」
富士登山の醍醐味は御来光と思われがちだが、本当に見事な御来光が見られる日は限られる。一方で、富士山の魅力は御来光に限らない。1日を通した様々な自然のドラマ、そして一緒に登る仲間たちとの関わりこそが醍醐味だろう。
「富士山は登る山ではない」と言う人もいるが、いやいや、登ってみると楽しみにあふれた山でもあるはずだ。今年の登山シーズンが少しずつ近づいてきた。最適なプランを探して富士山に挑戦してほしい。

(AERA編集部・川口穣)
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