焼鳥の見世 TORINO:神奈川県横浜市中区野毛町1-22-1 17:00~23:30 日曜定休 TORINOは2016年オープン。東京で働いていたが、歴史ある雰囲気や人情にハマって横浜・野毛を選んだ(撮影/写真映像部・馬場岳人)
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 日本食に魅せられ、日本で腕を振るう外国ルーツの料理人たちの極上料理。イタリア出身の焼き鳥屋さんは、寿司のように焼き鳥にも進化の可能性があると言う。AERA 2025年6月2日号より。

【写真】絶品の焼き鳥を焼き上げるイタリア料理のシェフ・パオロさん

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パオロ・コロネッロさんは2007年に初来日。「カウンター文化」の大ファンになったという(撮影/写真映像部・馬場岳人)
パオロさんがじっくりと焼き上げる焼き鳥はどれも絶品。9串のコース(2400円)が基本(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 日本で働く外国人シェフといえば、ルーツがある国の料理を手掛ける人が大半だろう。一方で、日本料理の料理人として腕を磨き、自らの店を持つ人々もいる。純日本風の料理で勝負する店もあれば、日本料理をベースに、独創的なアレンジを加えて提供する店も。

日本のカウンター文化

 昭和レトロな雰囲気が色濃く残り、個性的な飲食店が連なる横浜市・野毛の角っこに立つ「TORINO」は、イタリア出身のパオロ・コロネッロさんが腕を振るう創作焼鳥の店。

 ランプに照らされた入り口をくぐり、カウンターに座ると目の前には寿司下駄のような板が置かれている。

「2007年に初めて日本に来て、この『カウンター文化』の大ファンになったんです。だから自分の店を出すときもこのスタイルで行こうと、すぐに決めました」

コースの1串目から3串目。左から手羽中のタンドリーチキン風、ささみとモッツァレラチーズのバジルソース、せせりと焼き金柑のオレンジソース(通常は1串ずつ供される)(撮影/写真映像部・馬場岳人)
コースの4串目はつくね。パルメザンチーズとオレガノを使ったトマトソースでいただく。日本のつくねをイタリアン風にアレンジしたという(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 ミラノ(イタリア)のほか、ニューヨークやダブリン(アイルランド)でも腕を振るったイタリア料理のシェフだった。初来日は友人を訪ねる観光旅行。そこで触れた日本の食文化に魅せられ、かつての同僚が東京に開いたレストランのシェフとして労働ビザを取得した。日本で働くうち、いつか出したいと思っていた自分の店を日本で、と考えるようになる。ただ、イタリアンは東京だけで1000店舗以上がひしめき、オリジナリティーを出しづらい。

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