5串目、バーニャカウダーはアンチョビとニンニクの風味がおいしい。「ウズラを使ってるから、ギリギリ焼き鳥」とパオロさん(撮影/写真映像部・馬場岳人)

「鶏肉はイタリアンでも使うけれど、食べるのは一部です。焼き鳥はあらゆる部位を使うのがおもしろかった。でも、味が塩とタレしかないのはもったいないですよね。寿司が世界料理になっていろいろなアレンジが加えられたように、焼き鳥にも進化の可能性があると思ったんです」

 TORINOの焼き鳥は、9串のコースが基本。それは、最初の1串から最後の1串までを合わせたひとつの料理だと考えているからだという。1串目は手羽中のタンドリーチキン風。ヨーグルトソースを合わせて食べる。「最初の1杯はビール」にぴったりの味だ。

6串目から8串目。左からボンジリとスペイン生ハムの柚子胡椒添え、もも肉の黒トリュフソース、砂肝とイチゴのバルサミコ酢。このあたりから赤ワインがぴったり(通常は1串ずつ供される)(撮影/写真映像部・馬場岳人)
最後の9串目はカモ肉の燻製。蓋を取ったときに広がる燻製の煙と香りが楽しい。9串のなかで気に入ったものはおかわりもできる(撮影/写真映像部・馬場岳人)

間違いなく「焼き鳥」

 一転、2串目はささみとモッツァレラチーズのバジルソース。やさしい味には白ワインがマッチする。その後もせせりと金柑のオレンジソースかけ、パルメザンチーズとオレガノを添えたトマトソースでいただくつくねと大胆なひと串が続く。串に刺されてしっとりと焼かれた鶏肉は間違いなく「焼き鳥」だ。

 6串目、柚子胡椒で仕上げたボンジリの生ハムのせから赤ワインに切り替える。最後のカモ肉の燻製まで9串たっぷりと堪能した。パオロさんとのテンポのいい会話も楽しく、ついついワインが進んだ。〆には元イタリアンのシェフらしく、絶品のカルボナーラも注文できる。

元は本場で修業したイタリア料理のシェフ。シメには絶品のカルボナーラ(1950円、写真は半量)を(撮影/写真映像部・馬場岳人)

「イタリアンや和食だけじゃなく、いろいろな国の料理にインスパイアされています。これからも野毛の楽しいお客さんと一緒に、おいしい店を続けられるように頑張りますよ」

(編集部・川口穣)

TORINOの店内(撮影/写真映像部・馬場岳人)

AERA 2025年6月2日号より抜粋

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