今春卒業した1期生の藤川空風さん(photo 井上有紀子) 

下調べと根拠のある授業

 学校の宿題はレポートが多いという。

「わざわざ小テストをしなくても、レポート、ディスカッションのために知識を覚えざるを得ないのです」(加藤教頭)。高校生になると、より詳しく下調べしたうえで、多角的な視点で議論するようになるという。

 今春卒業した1期生で広島県出身の藤川空風(くうふう)さん(18)は地理の授業が印象に残っているという。地図の上で国名を覚えるだけの学びではなく、東南アジアのマングローブ林がテーマのときは、マングローブ林の近くで暮らす人たち、そこで漁をする人、観光業者、そして政府――。それぞれの視点に立って議論することで、それぞれのメリットとジレンマに気づいたという。授業が終わっても、班のメンバーで調べたり、ディスカッションをした。議論は思いつきではなく、下調べと根拠に支えられた「深い対話」だったという。

 藤川さんは、会社員の母との母子家庭だ。離婚した父が金銭的なサポートをしてくれたが、数千万円かかる海外大学の学費を払うことは不可能だった。

「もともとは英語が使えたらいいなくらいでした。正直、中1のときは海外に行くつもりはなかったです。自分とはあまり関係ないと思っていました」(藤川さん)

奨学金を借りて海外大学へ

 だが、海外大に進学した学生たちのインタビューを読むなかで、「海外に進めばこんなふうに楽しく学べるのかな」と思うようになったという。

 合格前に奨学金の給付が決まる「柳井正財団」の「予約型奨学金」の選考を通過し、特定の大学に合格すれば、年間上限7万ポンド(約1350万円)が給付されることを知ったた。そこで高校2年の秋から、海外大学対策にシフトすることになった。

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