広島叡智学園の中学2年の「枕草子」についてのディスカッション。教師からの一方向の授業ではなく、ディスカッションやグループワークが多い
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 広島県の離島の県立高校から今春、延べ94人が海外大学に合格した(4月30日現在)。卒業生の多くが広島県出身の「普通の子」という同校がこれほどまで実績を上げられたのはなぜなのか。

【写真】離島の県立高校、母子家庭……それでも海外進学

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 瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ大崎上島(おおさきかみじま)にある広島県立の中高一貫校・広島叡智(ひろしまえいち)学園。

 広島市中心部から高速バスで1時間半、港でフェリーに乗り替え、瀬戸内海の島々を越えながら揺られること30分ほど。いい風が来るのを船が待つ「風待ちの島」と呼ばれた、造船とミカンの島だ。

 人口は約7千人。24時間営業のコンビニはなく、到着した小さな港から循環バスに乗ると、まっすぐな道と広い空が続く。周りにはビルや民家はなく、穏やかな風が吹く。

首都圏の進学校を凌ぐ進学実績

 そんな場所にある同校から今春、1期生が卒業した。特筆すべきは、その進路だ。

 QS世界大学ランキング9位のユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)4人をはじめ、エディンバラ大学、ペンシルベニア大学、カリフォルニア大学バークレー校など世界の名門大学に合格者を出した。海外大学の合格者は延べ94人にのぼった。

 進学校の海外大学合格者数を集計している「大学通信」情報調査課課長の雫純平さんも、広島叡智学園の快進撃に「驚いている」と話す。

 大学通信によると、2024年は東京の私立・広尾学園で約200人、三田国際学園(当時)で120人、N高校が104人だった。単純に24年のデータで考えると、広島叡智学園から94人合格は、「国内の高校トップ5」クラスの実績だ。

 しかも、驚くべきことに卒業生45人のうち35人が、海外生活の経験ナシ。全寮制で県外や海外出身者もいるが、多くが広島県出身のいわゆる「普通の子」たちだ。さらに、京大をはじめとする国内の難関大への合格者も多数出た。

 なぜこれほどまでの合格実績を上げることができたのか。

 19年4月に開校した同校は国際バカロレア認定校だ。学習指導要領に則っているが、世界共通のカリキュラムを履修。最終試験のスコアは、海外大学の出願資格にできる。知識と理解力があるのはもちろん、探究心に富む人を育てることを掲げている。

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