合唱コンクールや音楽会は、これからの時代に大切なスキルを鍛えられる機会(撮影/吉松伸太郎)
合唱コンクールや音楽会は、これからの時代に大切なスキルを鍛えられる機会(撮影/吉松伸太郎)

 ただ、今後はAI(人工知能)の進化で学力の定義もいまとは大きく変わっていくでしょうね。そうなると、大事になってくるのが「人間力」なんじゃないかな。そこには想像力ももちろん含まれます。尊敬するチェリストのヨーヨー・マさんは、「パフォーミングアーツ(体を使って表現する芸術)を経験することが大切である。そこでコラボレーション、フレキシビリティー、イマジネーション、イノベーションというこれからの時代に大事な4つのスキルが身につけられる」とおっしゃっています。振り返ってみれば、学校の合唱コンクールや音楽会って、まさにそうした力を育むためのものだったんだなと思います。他の人と力を合わせて協力しないとうまくいかないし、テンポや音をまわりに合わせるためには柔軟性や適応力も必要。想像力やアイデアも求められます。音楽を奏でることは、そうした人間力を自然と育む、いちばん身近な方法なのかもしれません。

Q. お母様から教わったことで、いちばん良かったと思うことは何ですか。

A. 断然、ポジティブ思考です! 昔から私が何かに悩んで相談すると、「なんでそんなことで悩むの? 大したことないから、どうにかなるよ」という感じで返されてきたんです(笑)。しかも母は、悩みを聞きながら「そんなの、あたり前田のクラッカー」など昭和なギャグをよく入れて返してくるので、なんだか一気に気が抜けてしまい、本当に大した悩みじゃなかったんだと思ってしまうんですよね。ある意味、人生お気楽でもいいのかもって思えちゃうんです(笑)。

 でも、母がそんな調子で常にポジティブで楽観的だったことで、ハードな受験勉強を乗り越えられた気がします。もし母が「絶対にハーバード大に合格!」と必死だったら、多分プレッシャーですごいストレスを感じていたはず。合否が学力だけで決まらないという性質上、ハーバード大の「模試」など存在しなかったので、判定が出なかったのもよかったのだと思いますが、私もなんの根拠もなく、ポジティブ思考で受かると信じ込んでいましたね。受かった後のキャンパスライフを思い描くことをモチベーションに勉強に打ち込んだというか。受験勉強って続けているとカーブもありますし、調子が出ないときもあるけど、そうしたことにいちいち左右されないことが大切。受験のときは特に、母から学んだこのポジティブ思考が生きたかもしれないですね。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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