
先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年4月22日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。
【写真】「ワンピース・オン・アイス」での宇野昌磨のダイナミックな演技
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宇野昌磨が2024年5月に競技を引退してから、1年が経とうとしている。初めてプロデュースするアイスショー「Ice Brave」開催を6月に予定するなどプロスケーターとして着実に歩む一方、競技についてはテレビ中継のアンバサダーとして後輩スケーターを見守っている。現地(アメリカ・ボストン)で取材した世界選手権について、振り返ってもらった。
――今回の会場であるボストンのTDガーデンは、宇野さんが初めて出場した2016年世界選手権の会場でもありました。ショート4位で臨んだフリーで思うような演技にならず(総合7位)、キスアンドクライで涙している宇野さんがリンク上のモニターに映っていた記憶がありますが、今回当時の記憶はよみがえりましたか
(練習用の)サブリンクを見た時に、思い出しました。(試合会場の)メインリンクは、練習できる機会がとても少ないんですね。試合ではもう、周りが見えなかったので。試合が終わった次の日に上(観客席)から見て「こんなに会場広かったんだ」って思うぐらい、すごく視野が狭まっていました。「なんとか頑張らなくては」という気持ちに、追い詰められていた感じでした。
全然、いい記憶はないですね。それだけ辛いって思えるぐらい、スケートと向き合っていたということなんだなって、今では思いますけど。サブリンクで練習している時から、日本で練習してきたことに比べて全然いいものが出せていないことが、すごく自分の中の苦しさにつながっていたな、と思い返していましたね。(今大会に)出ているメンバーが自分の力を発揮してほしいな、と思いながら見ていました。
――初出場の世界選手権で6位と健闘した佐藤駿選手には、大会前に「成功より失敗の経験の方が将来的に自分のためになる」というアドバイスをされていました。全日本選手権(7位)で苦い経験をした佐藤選手がこの世界選手権で力を出せた理由として、宇野さんの言葉の影響も大きいと思いますが、いかがですか
本当に、彼の実力あってこそだと思います。人に言われても気持ちの切り替えってそう簡単にできるものじゃないので、僕は正直「今回は、ちょっと難しいんじゃないかな」と思いながら、話をしていました。でも思い詰めるような失敗ではなく、次につながる失敗をしてくれたらいいなとも思いながら、言葉をかけていたんです。でも彼は、本当に練習通りの力を発揮していました。練習以上ではなくて、練習通りに近い力を発揮できていたところが、すごく良かったのではないかなと僕は思います。