性教育に「はどめ規定」
セックス離れが進む背景には、価値観の多様化や、記事「夫37歳は「妻は大好きだけど、最後までできない」と打ち明けた 多くの男性が不妊症の原因で悩んでいる」で触れたデジタルコンテンツの普及などが挙げられるが、性機能に詳しい専門家の間では、「性教育のあり方」を問題視する声も根強い。
日本の教育課程では、中学1年生の時に、受精や妊娠を学び、成長に伴い男女の体がどのように成熟していくかや、ヒトの受精卵の成長の過程を教える。だが教科書には、受精の前提となる性交渉についての記述はない。国が定める学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という一文があるためだ。通称「はどめ規定」と呼ばれ、“妊娠の過程=性交渉については取り扱わない”ということになる。
「性交渉=汚らわしい」の先入観
「妊娠の経過は取り扱わない」という教育方針によって、性交渉は今も、教育の現場でベールに包まれている。そのため正しい知識をどこで得たらいいかわからず、青年誌などの過激な性描写をスタンダードとして認識したり、「女性は最初の性交渉で処女膜が破れ、血が出る」といった、誤った“神話”が、まことしやかに語り継がれたりもする。
実際、「セックスしたくない」という女性には、幼い頃から植え付けられた「性交渉=汚らわしいもの」という感覚が拭えないまま大人になった人も多いという。中村医師は言う。
「セックス=汚らわしいというイメージを持っているのは、厳しい親に育てられた、どちらかと言えば学歴の高い人が多い印象です」
家庭で子どもの性的トラウマ
家族でテレビを見ている時、キスシーンになるとチャンネルを変えられたり、親が性的なものを忌み嫌っている雰囲気が家庭内に出たりする。ある意味ではその積み重ねも、子どもの性的トラウマにつながるという。
「日本の性教育は、性の悪いところばかりを挙げがちで、性が元来、人生を豊かにするものであることや、性の楽しさといったポジティブなイメージからかけ離れたものになっている。結果的にそれが、性行為=してはダメなものというメッセージになっている。今のセックス離れは、その影響も強いのではないでしょうか」(中村医師)