「恋愛やセックスは重要じゃない」という20代男女が増えている(写真はイメージ/gettyimages/)
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 恋人はいなくていいし、セックスも必要とは思わない。子どもをつくる時は、セックスじゃなくて、シリンジ法や不妊治療で――。取材をすると、そんな傾向が見えてくる。若者の恋愛や結婚離れが指摘されて久しいが、セックス離れも加速しているようだ。

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性欲がなくなる時代がくるなんて

「何とも悲しい世の中になりました」

 複雑な胸中を口にするのは、日本性機能学会に所属し、長年にわたり、多くの患者の性に関する悩みに向き合ってきた医師だ。

「人間の三大欲求の一つである『性欲』が、ここまでなくなる時代になるとは。本来、性機能は、人が生きていくうえで大事なものでしたが、重要視されなくなってきている。もっと性を楽しみましょう、セックスしましょうと言いたいけれど、もはやその術がわからないのです」

 2021年の出生動向基本調査によると、「異性との性交渉経験がない」人の割合は、18〜34歳の独身男性で44.2%、同年齢の独身女性で49.4%と、4〜5割に「性体験がない」という。

 恋人がいない人の割合も増加傾向にある。「リクルートブライダル総研」が発表した「恋愛・結婚調査2023」によれば、20~40代の未婚者全体で「恋人がいる」人の割合は29.7%。「現在恋人がいない(付き合ったことはある)」は36.2%、「現在恋人がいない(付き合ったことがない)」は34.1%で、7割が「恋人がいない」という結果が出た。

若い人ほど恋愛や性に関心ない

 性機能やフェムゾーン医療について詳しい、前出の中村綾子医師(女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長)は言う。

「若いほど、恋愛やセックスに関心がない人が多い印象です。セックスは『全然重要じゃない』と考える20代も増えています」

 例えばデリケートゾーンのケア(女性器とその周辺の手入れ)も、これまでは“パートナーのため”にする女性が多かったが、最近の若い人は“自分のため”にケアをする意識が強い。

「相手がいなくても、純粋に自分のために、自分に手をかけるという傾向が強まっているように感じます」

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