性は人生を豊かにしてくれる

 “性は、人生を豊かにしてくれるもの”というのは、世界有数のセックスレス大国に暮らす日本人にとっては、少し遠い感覚かもしれない。

 性外来で長年患者と向き合ってきた、前出の大川玲子医師(婦人科)も、「性交渉におけるパートナーとのコミュニケーションは、時間をかけてつくり上げていくもの」と話す。

「どちらかが我慢したり、傷ついたりすることなく、セックスを楽しむまでには、丁寧なコミュニケーションが必要になります。最初からうまくいかないのは当たり前。強い刺激はなくても、前向きに時間をかけて積み重ねていけば、人生を豊かにしてくれる素敵な楽しみが生まれるはず。“セックスレスで何が悪いの?”という風潮もありますが、私はやはり性外来を通じて、セックス=大切なもの、楽しむもの、とポジティブな文脈で伝えられたらと思っています」(大川医師)

セックスレスは課題ではない?

 幸せの形が人それぞれであるように、性のあり方も人それぞれ。能動的に臨もうとする人もいれば、全く興味がない人もいる。

 セックスレスでも良好な夫婦関係を築くことができ、子どもを望めば代替手段もある現代は、もはや「セックスレス」=「課題」とも言えないのかもしれない。妊活手段の広がりを見れば、より自分たちにフィットする性のあり方を模索する動きも見られる。

 表立って語られることが少ない性の実際から、変わりゆく時代が垣間見えたように感じた。

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