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 激務にすれ違い――。共働きの夫婦では、性生活を営むこと自体が難しいケースも少なくない。だけど、子どもはほしい。いま、「シリンジ法」が注目を集めている。

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 スイッチはなかなか入らない

「こんなにストレスなくできるなら、もっと早くから試していたらよかった」

 性交渉をせずに妊活をする「シリンジ法」についてこう話すのは、IT企業に勤める神奈川県在住の会社員女性(34)。3年前に結婚し、現在夫と夫婦二人暮らしだ。2年ほど前から子どもを望んで妊活を始めたが、互いに疲れて“できない”ことが続いていた。

 同じくIT業界で働く夫ともども、夜遅くまで仕事をする毎日。コロナ禍以降、週数日は在宅ワークとはいえ、残業時間は以前とほぼ変わらない。週に1日は、夜中に働く夜勤対応の日もある。排卵日近辺に性交渉のタイミングを持つ「タイミング法」を毎月試すのは、「結構なストレスになっていた」と振り返る。

「仕事も忙しいし、なかなか“その気”になれない日も多くて。夜遅くに仕事を終えて、晩御飯を食べて、お風呂に入ったら0時越えが当たり前。もうバタンキューで寝たい。そこから“さあ、始めましょう”というスイッチはなかなか入らない。それって普通のことじゃないですか?」

 タイミング法の限界を感じ始めた頃、妊活雑誌で知ったのが「シリンジ法」だ。

初心者でもトライできそう

 シリンジ法とは、シリコン製のカテーテル(医療用の管)とシリンジ(注射器)を用いて、精液を膣内に注入する方法。注射器の先の部分が、適度に軟らかく弾力性のあるシリコン製のカテーテルになっており、容器に採取した精液を吸い上げて、膣内に注入する。

 性交渉に代わる新たな妊活法として、ここ数年で広がり始めている。自然妊娠と同程度の確率が期待できるといわれ、雑誌にはシリンジ法で妊娠した人の体験談も掲載されていた。「とにかく手軽」「本格的な不妊治療を始めるよりハードルが低い」などの言葉に背中を押された。

 ネットで「シリンジ法」を調べると、初心者でもトライできそうなキットが多数販売されていた。夫も興味を持ち、「試してみようか」という話になった。口コミやレビューを見て、評判の良さそうなメーカーのシリンジキットを購入。翌日には、キットが配達されて手元に届いた。

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