「妊活=性交渉ありき」ではない
片桐さんは時代の流れも感じるという。
「性交渉は以前は愛情表現やスキンシップの一つでしたが、現代の若い層からは性交渉にあまり重きを置かず、妊活=性交渉ありきではない傾向を感じます。今後より一層、性交渉に頼らない妊活スタイルがクローズアップされるかもしれません」
不妊治療クリニックなどでも、「性交渉と同程度の妊娠率が期待できる」として、シリンジ法を推奨する動きが広がっている。前出の「プレメントシリンジ」もクリニックで扱われており、不妊治療クリニックでシリンジ法キットを買うこともできる。
都内の複数の不妊治療クリニックが「性交渉に代わる手段として提案している」と取材に回答し、「性交渉とシリンジ法は妊娠率が同程度ということもあり、セックスに悩みのあるカップルには積極的にシリンジ法を勧めています」という医師の声もあった。
セックスにこだわるスタイルからシフト
「シリンジ法が広がっているのは、セックスにこだわる従来の妊活スタイルからシフトしてきている証しだと感じます」
こう話すのは、生殖医療に詳しい生殖工学博士で、プリンセスバンクの香川則子さん。子どもを望む仲の良い夫婦でも、性交渉に積極的ではない傾向は決して珍しくないという。
「以前は、子どもをつくる=愛のあるセックスでなければ、という感覚が強かったと思いますが、今は違う。〝セックスを頑張りすぎない妊活〟のスタイルが定着してきています。シリンジ法は、本格的な不妊治療を始める前のステップとして、よりスタンダードになっていくのではないでしょうか」(香川さん)
(ライター・松岡かすみ)