(左)片山杜秀氏と(右)大澤真幸氏の対談が実現(写真/朝日新聞出版 写真映像部 和仁貢介)
この記事の写真をすべて見る

 2006年10月に創刊された朝日新書が、2025年4月11日発売の『西洋近代の罪──自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか』(大澤真幸著)で通巻1000号を突破しました。
 通巻1000号を記念して、社会学者の大澤真幸氏と思想史研究者・音楽評論家で慶應義塾大学法学部教授の片山杜秀氏に、ウクライナ戦争、ガザ戦争、そしてトランプ再選でますます混沌とする世界について、「日本の戦前のファシズム」を軸に読み解いてもらいました。

*   *   *

ある種のファシズム的現象が欧米で起きている

大澤 アメリカやヨーロッパで今、ある種のファシズム的な現象が起きている、と僕は感じています。一番わかりやすいのはトランプ現象です。「アメリカ・ファースト」という標語に代表される、過剰なナショナリズム的な主張に同調する人がたくさんいる。ただし、これは僕らが普通にイメージしてきた古典的なファシズムとも違う。イーロン・マスクに代表される超テクノエリートと合体していることからもわかるように、リベラルな――いやむしろリバタリアン的なファシズムと呼べるものです。

片山 大澤さんの最新刊の『西洋近代の罪』(朝日新書)にもそういうことが書かれていますね。

次のページ 戦後生まれの僕たちが戦前をどう記憶するか