数学はむやみに怖がる教科ではない
――数学の参考書で役立ったものを教えてください。
駿台予備学校講師の清史弘さんの『数学の計算革命』(駿台文庫)です。書店で立ち読みして、自分に合うのではと思い買ったところ、非常に良かったです。この本には、無駄な計算をしないで計算ミスをしないようにする方法などが書かれています。わたしはもともと計算が遅いことに少しコンプレックスを抱いていましたが、書いてある方法を身につけることで、頻出の計算を早く終わらせ、それ以外の思考などに時間を使えるというアドバンテージを得ることができました。それから『チャート式』(数研出版)です。青チャート、赤チャートなどがあります。青は大学受験の数学を勉強するなら必ず出合う一般的な問題が一通り載っていて、いわば解き方の一覧です。東大の入試問題も多くは青チャートのレベルの問題に分解して解くことができると思っています。
――数学を身につけるためにどのようなことが必要でしょうか。
難問を解くのにひらめき、センスが必要と言われることもありますが、わたしはそう思いません。問題の99%は今まで学んできた例題にあてはめる、例題の解き方を組み合わせることによって、正解にたどりつくことができると思っています。数学を何となくとらえるのではなく、問題文があってそこに示された必要な条件から、自分はどういう道具をもってくれば解けるか。それを考える楽しさが数学にはあります。自分の頭でこういったことを考えて問題を解いたという成功体験があれば次に問題を解くハードルが低くなります。この訓練を地道に積み重ねれば、数学はむやみに怖がる教科ではなくなると思います。むしろ英語や国語よりも地道に取り組めば努力で解ける教科かもしれません。
――塾や予備校の授業で心がけていたことはありますか。
ノートはしっかりとりました。板書を書き写すだけでなく、その行間のつながりで先生が言ったことや、自分が都度気になったことも書いて、自分のなかで授業を再現できるくらいになんでも書いていました。そのおかげでノートを見返したときに、今日の授業の中で何が大事で、自分が理解できていることとできていないことは何かを知ることができてよかったと思います。