
OBは「気になるのは選手起用」
井上監督は1日の巨人戦では1点リードの8回無死一、二塁で石川に2球続けてバントのサインを送っていた。この時、石川はバントができず、3球目からヒッティングに切り替えて内野安打を放ち、追加点につながっている。
中日の球団OBは「泥臭く1点を取りにいくという姿勢は一貫していると思います。そのためには石川に犠打のサインを出すことも、ピンチバンターで代打を出すことも選択肢として考えられる」と理解を示す。4番を育てることと、試合に勝つことを同時に進める難しさがある。
だが一方でこのOBは、「僕が気になるのは采配でなく、選手起用です」と続ける。
「井上監督は『ポジティブバトル』という言葉を春季キャンプから使い、実績に関係なく結果を残した選手を起用することを公言してきました。でも、実際にその考えを貫いているかというと疑問が残ります。上林誠知がオープン戦で打率.341、1本塁打と絶好調でしたが開幕スタメンに名前がありませんでした。ブライト健太も代打で結果を残し、スタメン起用された6日のヤクルト戦で決勝アーチを放ったのに、次の試合で無安打に終わるとスタメンを外れた。9日のヤクルト戦は打率1割台の選手がスタメンに4人いました。戦術面で事情があるかもしれないですが、結果を出している選手にはチャンスを与えてほしいです」
中日は低迷期が長く続いている。黄金時代を築いた落合博満元監督が2011年限りで退任して以降、13年間でBクラスが11度と沈み、一度も優勝を果たせていない。チーム再建を託されて立浪和義前監督が22年に就任したが、球団史上初の3年連続最下位と屈辱を味わい、志半ばでユニフォームを脱いだ。後任で白羽の矢が立てられた井上監督は、中日で現役一筋20年間プレーし、中日、阪神でコーチを歴任。昨年は中日の2軍監督を務めていた。現役時代から取材してきたテレビ関係者は、こう評する。
「コミュニケーションを大事にする監督ですね。選手に本気でぶつかり、裏表がない。DeNAで監督を務めた中畑清さんと重なります。停滞しているチームの意識を変えるのに適任の人材だと思います。ただし、結果を出すまでは時間がかかると思います。得点力不足は一朝一夕で改善される課題ではないですし、先発陣も弱体化している。勝負は来年以降でしょう」