同社は国内でも新しい油田やガス田がないかを調べている。昨年夏には島根、山口両県の沖合で実施していた天然ガスと石油の試掘調査を終え、ガスなどの存在は確認したものの、商業生産はしないと決めた。開発に成功すれば国内の海洋ガス田としては約30年ぶり。注目を集めたが、商業生産するには難しい規模だったという。
一方で、新潟県長岡市の南長岡ガス田北側の地域では商業生産をにらんだ試掘調査を続ける。
同県岩船沖の海洋ガス田をはじめ、国内外で石油や天然ガス事業を手がけるライバルの石油資源開発も、新たな開発先を探っている。1960年から生産を続ける同県小千谷市の片貝ガス田では、生産量を維持するために既存の井戸の追加開発や新しい井戸での生産を計画中だ。コーポレートコミュニケーション室で広報担当の成田順子さんは言う。
「地下の世界は解明されていないことが多く、油田やガス田の開発も『センイチ(1千分の1)』と言われるほど確率が低い。調査から生産まで、少なくても10年単位の時間がかかる。加えて、商業生産に踏みだすには操業だけでなく、運搬や販売までを見据えて経済的に成り立つかを考える必要があります」
一筋縄ではいかない厳しい世界のようだ。それでも国内で開発を続ける意義について、成田さんは次のように話す。
「国産の資源があれば国際的な危機が起きても不安を抑えられる。操業コストは海外情勢の影響を受けにくく、関税もかからず、輸送費用も安い。難点は規模が小さいことですが、その地域の雇用面での貢献も期待できます。さらに大事なのは、国内に技術力のある会社があれば海外の権益獲得にも乗り出しやすくなること。売り手側の主張をうのみにするばかりでなくなるはずです。それはエネルギー安全保障を考える上でも重要です」
ウクライナ危機や急速な円安で資源輸入国の日本は原油やLNGの価格高騰に悩まされ、調達不安が広がった。円安はやや落ち着いたとはいえ、心配な状況は変わらない。
険しい道のりだが、家計や企業を助けてくれる日が来ることを心待ちにしたい。(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2023年1月20日号