ウクライナ危機や急速な円安の進行で、資源の大半を輸入に頼る日本は大きな打撃を受けた。だが国内にも油田やガス田がある。小規模ながらその歴史は古く、暮らしや文化に深く根付いた地域もある。「国産」の重要性が見直されている。
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「千葉で取れる天然ガスはメタンが99%で、硫黄分は含まず不純物が少ない。熱量も十分で、都市ガスとしてそのまま供給できる」
千葉県東部、長生(ちょうせい)村の七井土地区にあるガス井(せい)を案内してくれたK&Oエナジーグループ(同県茂原市)総務部マネージャー、新井賢太郎さんはこう話す。このガス井からは1本で、一般家庭2千戸分の消費量にあたる7千立方メートルの天然ガスが取れる。
天然ガスや石油といった化石燃料は、海底などにたまった太古の生き物の死骸などが岩石となり、地熱や微生物の働きで長い時間をかけてできると言われている。地中でも、やはり長い時間をかけて油やガスがたまりやすい地層に集まっていく。ひとくちに「油田」「ガス田」と言っても、どの油田やガス田でも、石油と天然ガスの両方が取れる。呼称に明確な定義はなく、その多寡によって便宜上、油田やガス田、油・ガス田と言い分けている。
天然ガスの開発会社などでつくる天然ガス鉱業会によると、国内には2019年末時点で新潟や千葉、北海道、秋田、宮崎などで稼働中の油田、ガス田が60あるという。
K&O社のガス井では、一度地上に取り出したガスを、地中深くまで埋め込んだ吹き込み管で地下に送り込み、その圧力で地層にたまったガスや「かん水」をくみ上げる。コップに差したストローに強く息を吹き込むと、コップの中の液体があふれる現象をイメージするとよい。
かん水とは、地中深くにある地層と地層の間にたまった地下水のこと。ガスは地圧によってかん水に溶け込んだ状態で存在している。こうした形で地中にある天然ガスは「水溶性天然ガス」と呼ぶ。