地中から採取したガスとかん水は、施設内のコンクリート製の箱形の分離槽に移され、気体と液体に分けられる。その後、送ガス設備で圧力を高めたり、においをつけたりしてそれぞれの契約者に届ける。
新井さんが続ける。
「国産の天然ガスは紛争や商品市況、外国為替市場の影響を受けにくい。そのため安定的な価格で提供できるメリットがあります。さまざまなモノが値上がりする今のような時期は有利です」
気になるガス代は、昨年12月の取材時点で海外の天然ガスを使う大手都市ガス会社などに比べ、月あたり2千円ほど安いという。
天然ガスは石炭や石油などほかの化石燃料に比べて燃やした際に出る有害物質や温室効果ガスが少なく、相対的にクリーンなエネルギーとされる。ただ、「エネルギー白書」(2022年版)によれば、20年度の国内の供給量は全体の実に97.9%を輸入に頼る。国産のガスが占める割合はたった2.1%にすぎない。
天然ガスは常温・常圧では気体の状態で、輸入先からは冷却した液化天然ガス(LNG)の形で運ばれてくる。冷却や運搬にかかる手間やコストを考えると、国産のエネルギーは有利だ。環境面の利点もあり、同社によると生産から燃焼までのCO2排出量は、輸入モノに比べて1割以上少ない。
同社の天然ガスは、都市ガスとしてグループ会社を通じ茂原市や市原市、大多喜町など県内5市3町1村の家庭約17万戸や学校、病院、オフィス、工場といった大口客に供給される。千葉のエネルギーを千葉で消費することから、「地産地消」ならぬ「千産千消」のエネルギーというのがうたい文句だ。
千葉で天然ガスが取れるのは、豊富な埋蔵量を抱える南関東ガス田があるため。その名のとおり、千葉のほか、茨城や埼玉、東京、神奈川にまたがる関東地方南部一帯をカバーする。水溶性天然ガス田として国内最大級。中でも同社が拠点を置く房総半島の太平洋側は地中の浅いところに鉱床があるなど、開発に有利な条件を備える。