![小川から湧き出す天然ガス(千葉県睦沢町を流れる瑞沢川)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/e/f/840mw/img_ef0fdb30459ff5d41077fa542372641435174.jpg)
このうち同社が採取する権利を持つエリアの可採埋蔵量は約1100億立方メートルで、同社の年間生産量の600年分に相当する。エリア内には、前述したような同社のガス井が400本前後ある。
地域では戦前から天然ガスの利用が進められてきた。諸説あるが、もともとは千葉県大多喜町の醤油(しょうゆ)醸造業「山崎屋」の太田卯八郎氏が明治半ばの1891年、屋敷内の水井戸に何げなくたばこの吸い殻を放り込んだところ、青白い炎を上げて勢いよく燃えだしたのが発端とされる。大正から昭和初期にはガス井を掘って料理の煮炊きや明かり、農機の燃料として使う家庭も目立った。
■地表に自然と油 にじみ出るほど
名残は今もある。周辺では畑や田んぼから湧き出てくるガスをドラム缶など手製の道具で集めて自宅で使う「マイガス田」のある家や、小川からガスがぽこぽこと噴き出す様子が見て取れる。室内やビニールハウスなどにたまったガスに気づかずに火気を扱い、爆発する事故が起きてしまうこともまれにあるという。「ごく身近にガスがある」(新井さん)。同社はそんな地域の暮らしを支えている。
1970年代以降、一貫して国産の割合が0.5%に満たず、天然ガス以上に海外頼みなのが原油。今も現役で活躍する油田の一つが、JR秋田駅から車で約20分の市街地に点在する八橋(やばせ)油田だ。
![INPEXの原油の処理プラント(秋田市)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/840mw/img_bb5366c3690d63a832434d3ed4447a3490861.jpg)
生産に携わる石油・天然ガス開発大手INPEX(インペックス)の秋田鉱場長、山田誠さんは言う。
「国産の原油はとても貴重です。生産量はわずかでも、日本のエネルギー安全保障に貢献していきたい」
八橋油田には地下から石油をくみ上げるための「坑井(こうせい)」が18本ある。意外なのは住宅地の一角や道路脇にあること。シーソーのように上下動を繰り返す「ポンピングユニット」と呼ぶ装置が、保育所やショッピングセンターの目の前で黙々と動いている。
「水井戸と同じ原理で、ここでは主に地下900~1800メートルのすき間が多い地層にたまった石油をくみ上げてきます。国内で実際に動いている様子が見られるところは限られます」