この時、倉田さんが39歳、彼は33歳。短期的にアパートを借り、同棲を試みる。一緒に暮らしてみて、彼が「違う」と思うなら、自分から堂々と去ることができるようにしたかったからだ。 

 婚姻届の提出を待たずして妊活をスタートしたのは、「この年齢で自然に妊娠するのは難しい」というのを、自然妊娠できると信じて疑っていない彼に分かってもらうためでもあった。市販の排卵チェッカーで排卵日を予測し、タイミング法を数カ月間試すところからスタート。「また生理が来たよ。私の歳で自然妊娠するのは難しいことなんよ」と彼に言うことが続く。 

 凍結している卵子があることは、交際時から彼に話していた。その卵子を使って、彼の精子と合わせて受精卵をつくり、「体外受精で妊娠するしか方法がないと思う」と、ある時彼に話した。ところが、彼の反応はこうだった。「人工的なやり方は嫌だ」「自然に授かるのを待とう」――。彼は、卵子凍結や体外受精など、生殖医療全般に抵抗感を持っていた。

次のページ 愛するがゆえのプレッシャー