テイラーズ大学卒業式=マレーシア留学サポートセンター提供

平均点未満なら退学

 海外の大学は、「入るのはやさしいが、出るのは難しい」といわれる。

 たとえば、米国の大学の場合、成績が基準に満たなければ退学になる。米国・国立教育統計センターによると、大学生の卒業率は平均約6割にとどまる。

 マレーシアの大学はどうか。

 同国の教育庁は留学生に対して80%以上の授業の出席率と、平均点(GPA2.0)以上の成績を求めており、これを下回ると留学ビザが切れ、退学を余儀なくされる。

 留学生の受け入れ業務にも携わってきたサンウェイ大学ビジネススクール経営学部・学部長の渡部幹(わたべ・もとき)教授は、こう語る。

「留学生について、教員から『この授業の単位を落とすとキックアウト(退学)なんですけれど、どうしましょう』といった相談が持ち込まれるのですが、日本人留学生の名前は割と頻繁に挙がります」

マレーシア留学に失敗する人

 渡部教授によると、マレーシアの大学に進学する日本人学生は、3つのカテゴリーに大別され、成績不振の学生はその1つに集中しているという。

 1つ目は、現地のインターナショナルスクールなどから進学してきた子どもたち。2つ目は、日本で高校までに交換留学などを体験し、自ら調べて「マレーシアで教育を受けたい」と、準備してきた留学生。

「これらの学生は概ね問題なくマレーシアで大学生活を送ります。特に2つ目の学生はほぼ例外なく優秀で、就職ではトヨタや伊藤忠商事など、受けた企業のすべてから内定をもらうような学生です」(渡部教授、以下同)

 問題は3つ目、「日本ではいい大学に行けなかったので、『海外の大学でハクをつけよう』とマレーシアにやってきた留学生」だという。

「欧米の大学に比べて、『マレーシアの大学の授業は楽だろう』と考えるのは大間違いです。勉強漬けになるつもりで来る覚悟が必要です」

 古来、貿易で栄えてきたマレーシアにはさまざまな外国人を受け入れる懐の深さがあるという。

「真っ正直に勉学に励むのであれば、欧米の大学に留学するより、道は開けやすいと思います」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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