パーキングエリアでは毎日、たくさんのドライバーたちが仮眠をとっている。「車内で眠れているなら、問題ないのでは?」と感じた山口さんに、先方の担当者は「北海道にいるとわからないでしょうが、こちらの真夏の暑さは半端じゃない。エアコンをガンガンかければ二酸化炭素も排出するし、ガソリン代高騰の中で燃費もかさんでしまうんです」と実情を話し、なにより、「居眠りや疲労による事故を減らしたい」と訴えたという。
テレワーク利用もできる
さらには、まったく想定外だった、多くの客が訪れるチェーンの小売店や商業施設からの問い合わせも複数あった。彼らが示してきたのは、立ち寝ボックスの新たな活用法だ。アームレストを下げれば、ノートパソコンを置いてテレワーク利用もできる。「まったくなかった発想」と新鮮な驚きを得た山口さん。仮眠に絞らずとも、発想次第で使い方が広がることがわかった。
現在は、駅にあるコワーキングスペースのように、時間制で利用できるよう、クレジットカードや交通系ICカードなどで支払いができるシステムを開発中だという。
海外の企業からも「自国で販売したい」との話があり、この春に始まる大阪・関西万博にも期間限定で展示する予定だ。
育て、堂々と仮眠できる文化
立ち寝ボックスの普及で、山口さんが何より願うのは、仕事中などに「堂々と仮眠できる文化」が醸成されることだ。オフィスビルのトイレで仮眠したり休憩したりする人もいるだろう。それは決して気分がいいものではないし、用を足したい人を困らせてしまう。ほんの少しの仮眠をとるだけですっきりするのに、堂々と仮眠する場所がないことが、多くの人を苦しめているのかもしれない。
「仮眠により能率が上がるとの研究も複数ありますし、健康にも良いことだと思います。我慢してがんばろうではなく、トイレに行くのと同じように眠気が来たら素直にそれを受け入れる、周囲も自然に受け止める、そんな社会につながればいいなと願っています」
(ライター・國府田英之)
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