ところで、私が最初に観た『ポケットモンスター』のアニメは第三十一話「ディグダがいっぱい!」だった。「ポケモンショック」の第三十八話まで数週間しかない。日本であれだけの社会問題になったのだから、第三十八話「でんのうせんしポリゴン」は当然台湾では放送されなかった。しかし、台湾のテレビ局は実に仕事が雑で、第三十七話の「次回予告」コーナーでは、映像は第三十八話のままなのに音声だけが第三十九話「ピカチュウのもり」のものになっていた。次週に見まみえるのはポリゴンなのか大量発生したピカチュウなのか、観ているこちらはちんぷんかんぷんで、何が起こったか分からなかった。
「サチコ」は私が人生で最初に耳にした日本語で、『ポケモン』は子ども時代に一番ハマった日本のアニメだ。中学の時、日本語を独学し始めた私はようやく「サチコ」が人名であること、そして「神奇寶貝=口袋怪獣=ポケットモンスター」ということに気づいた。小二の時に何気なく目にした「ポケモンショック」の記事と、第三十七話のめちゃくちゃな次回予告との関連性もそこで分かった。子ども時代の謎が一つ解け、目から鱗(うろこ)の気分だった。これもまた日本語を勉強したおかげだ。
ちなみに、「ポケットモンスター」は同じ中国語圏でも台湾以外の地域では違う訳名が使われていた。例えば香港では「寵物小精靈(ペットの小さな精霊)」と訳されていて、シンガポールでは「袋魔(袋の魔)」と呼ばれていた。任天堂のポリシーによって中国語圏での訳名が「精靈寶可夢」に統一されたのは2016年のことで、更に2019年には音訳重視の「寶可夢(バウカーモン)」と変更された。「神奇寶貝」という名前に慣れている私にとっては今昔の感だ。
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