夕食は制限なく食べる
ある日の夕食はイタリアンレストランで編集者やライターと、前菜盛り合わせ、ポテトフライ、ピザ、パスタ、魚介類のメイン、ビールと白ワインを制限なく。極端な偏食で、肉、魚、卵、牛乳、バター、マヨネーズは食べられない。動物性食品で食べられるのはエビ、カニ、イカ、タコ、貝などの魚介類とチーズのみだ。
「今年77歳、健康診断の結果はオールAの病気知らず」と言う石原院長がこう続ける。
「伊豆と東京での診療、講演会、執筆や取材対応と365日休みはゼロですが、体は軽く、疲れを感じません。週4日は10キロのジョギング、週2回は50~100キロのバーベルを使ったウェートトレーニングも難なくこなしています」
石原院長は「健康長寿のカギは空腹にある」と断言。実際、複数の研究結果が空腹の健康効果を示している。2000年には米マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士らが「空腹の時間を長く保つとサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化し長生きする」と発表。オートファジーにも注目が集まっている。細胞が自らの一部を分解し再利用する、つまり細胞を若返らせる働きのことで、空腹時に活性化する。2016年には、東京工業大学(現・東京科学大学)の大隅良典栄誉教授がオートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した。
さらに2019年、ジョンズ・ホプキンス大学のマーク・マトソン教授らは過去の研究の検証から、「毎日16~18時間の断食」「週2日、摂取量を500~700キロカロリー以下に制限」といういずれかの方法で、血圧低下や体重減少の健康効果が得られ、寿命を延ばす効果が期待できるという内容を米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで報告している。
「人類の歴史の大半は飢餓であり、私たちの体は飢餓に適応できるように作られているのです。『1日3食規則正しい食事を』と言われますが、生活習慣病の患者数は増加し、発症年齢も若年化しています。長寿であっても、健康長寿ではない。現代人は明らかに食べ過ぎで、健康のためには自ら意識して空腹の時間を作ることが必要なのです」(石原院長)
(ライター・羽根田真智)
※AERA 2025年2月17日号より抜粋