球史に新たな道を切り拓けるか。桐朋高(東京)の森井翔太郎がアスレチックスとマイナー契約を結んだことが1月15日に球団から発表された。NPBを経ずメジャーに挑戦する日本人はこれまでもいたが、メジャーの試合に出場できたのはごくわずか。高校卒業後すぐに海を渡った選手では皆無だった。だが、森井は歴史を変えそうだ。
【写真】高校史上最多の本塁打をマーク、米国の大学に進学してメジャーを目指すのはこの選手
森井が在籍する桐朋高校は東大合格者を毎年輩出する進学校で、甲子園出場はない。森井は投打の二刀流として活躍し、183センチ、89キロの恵まれた体格から、マウンドに立てば最速153キロの直球を投げ込み、打撃では高校通算45本塁打をマーク。メジャー志向が強く、3年夏の最後の公式戦を終えると、NPBを経ずに高卒で渡米することを決断した。外国を含むプロ球団と交渉するために必要なのでプロ志望届は提出したが、昨秋のドラフト会議前にNPBの各球団には指名しないよう要望を出していた。
森井を調査していた在京球団のスカウトは複雑な表情を浮かべる。
「彼は異端の存在です。野球強豪校で技術を培ったわけではないのでまだまだ粗削りな部分はありますが、身体能力は高校生の中でズバ抜けている。こういう選手を育成するのがプロの醍醐味と言えるので、メジャー挑戦は複雑な思いでした。もし、NPBでプレーすることが可能だったら、ドラフトでは上位で消えていたでしょう」
ドラフト指名選手のだれをも上回る契約額
NPBの各球団に衝撃が走ったのは、森井の契約条件だ。アスレチックスの球団公式サイトによると契約金は151万500ドル(約2億3600万円)。NPBを経由しない日本のアマチュア選手としては、史上最高額だった。そして、この契約額は、NPBが規定する新人選手の契約金の上限「1億円プラス出来高5000万円」をはるかに上回る。つまり、森井の契約金はNPBのドラフト指名選手のだれをも上回ったことになる。
高校野球の指導者は「今後はNPBを経ずにメジャー挑戦を目指す高校生が増えると思います」と予測する。
「森井の契約は衝撃の好条件です。今後は3億円、5億円で契約を結ぶ高卒の日本人選手が出てきても不思議ではありません。金銭面だけでなく、メジャー球団の育成方針を聞いて、施設や環境に魅力を感じれば、すぐに米国へ行くことが現実的な選択肢になるでしょう」