セカンドキャリアを見据えた「学業補助金」も
森井の契約には、「学業補助金」として25万ドル(約3900万円)も付けられた。NPBの契約では耳慣れないが、メジャーには選手の学業継続を奨励する制度がある。現役引退後に大学に入学・復学する際の学費や、オフシーズンに大学の講義を受ける学費などをバックアップするのが「学業補助金」だ。
「現役引退後のセカンドキャリアも見すえた制度です。もし、故障などでメジャー昇格が叶わなくても、学業継続を奨励することで将来のセーフティーネットになる。NPBはこうしたサポートが手厚いとは言えないので、見習う点があると思います」(メジャーを取材するフリーライター)
大谷翔平(ドジャース)、菊池雄星(エンゼルス)ら球界を代表する選手たちも高卒後にメジャー挑戦を志向したが、NPBの球団でのプレーを選択した。スポーツ紙デスクは、「NPBでプレーして肉体強化し、技術面をレベルアップしてからメジャーを挑戦しても遅くないという考えが当時はありました。米国はマイナーの環境が想像以上に過酷ですし、素質があってもふるいに落とされて消えていく選手がたくさんいる。NPBで実績を積み上げて商品価値を上げてからメジャーを目指すという道がスタンダードでした」と語る。
米国の大学からメジャーを目指す佐々木麟太郎
だが、月日を経てこの価値観が揺らぎ始めている。森井が成功すれば、才能を持つ高卒、大卒の選手たちが、直接メジャーを目指すようになってもおかしくない。高校№1スラッガーだった佐々木麟太郎のように、米国の大学に進学する道もある。
佐々木は身長184センチ、体重113キロという恵まれた体格からの力強いスイングで、花巻東(岩手)時代に高校史上最多の通算140本塁打をマークした。23年のドラフトで1位指名が有力視されたが、プロ志望届を出さずに米国・スタンフォード大に進学。文武両道の名門校で、学力を磨くと共に野球に打ち込み、メジャーのドラフト指名を目指ししている。