働くために支障になっている発達障害の特性だが、会社側が一緒に考えて、環境や仕組みを整えることで、強みにもなる。多様な人材が活躍できるようにするには、具体的にはどうすればいいのか。AERA 2025年1月20日号より。
【写真】自分のペースで仕事ができるように半個室はパーテーションで区切られている
* * *
発達障害のある人を積極的に採用する、オムロンソフトウェア(京都府)を訪ねた。オフィスの一角に、半個室がある。ベージュのパーティションで区切られた半個室だ。同社社員で発達障害のある田切寛之さん(43)は、この半個室をほぼ毎日使う。
「人の目があると、頑張りすぎて余計に集中して疲れてしまいますので」
半個室は自分のペースで仕事ができる大切な場所だ。
だが、この半個室は発達障害のある人の特別な場所ではない。リモート会議をする社員も日頃から使う。発達障害のある社員にも、そうではない社員にも、使いやすい仕組みとなっている。
オムロンは1972年に日本初の福祉工場「オムロン太陽」を作ったのを皮切りに、障害者雇用に力を入れてきた。
現在は、雇用する障害者の80%が身体障害者で、精神障害と発達障害のある人は17%、知的障害のある人は3%だ。
これからは、精神・発達障害の採用に注力する。しかし、従来の選考は面接が中心となっている。高い能力があっても、面接でうまく表現できなければ、採用するのは難しい。オムロン障がい者雇用システムアドバイザーの宮地功さんは言う。
「発達障害がある人が、能力を生かして働けないことは社会的な課題です。製造会社としても、発達障害のある方の尖(とが)った特性が、技術の向上につながると思いました」
不得意なことを支援
2019年からオムロングループ全体で「ニューロダイバーシティ採用」を本格的に始めた。発達障害のある人に得意なスキルで事業に貢献してもらう。チームは発達障害のある人の“でこぼこ”を理解して、不得意なことを支援する体制だ。
採用基準も変えた。これまでは障害者雇用も含めて総合職採用だったが、ニューロダイバーシティ採用ではまず「このスキルを持つ人、この仕事をしたい人」と要件を示して募集する。いわゆる「ジョブ型雇用」的な採用だ。応募者には面接のほか、2、3週間の長期インターンシップに参加してもらい、じっくりマッチングを目指す。