3年間共に働いてきたグループマネージャの中村孝次さんは田切さんの成長を実感する。
「田切さんの経験が増えて、ユーザーの要望を実現するためのポイントが押さえられています」
最初は1から10まで説明を受けていた印象だったが、今はそこまで言わなくても自力でできることが増えた。
中村さんのグループには、発達障害のある社員は田切さんを含めて3人いる。納期をプレッシャーに感じやすい社員には、少し早めに終わる計画を立てて進めるようになった。環境を改善できないか総務部に掛け合うこともある。何かあれば本社に常駐している障害者支援経験のある「専門家」が駆け付ける。
中村さん自身も変わった。心配ごとを抱えそうな人がいれば、すぐに相談に乗るようにした。だが、個人に合わせた対応は、発達障害のある人のためだけではない。
「障害の有無にかかわらず、いろいろな性格の社員がいます。その人の特性・特徴、得意・不得意を知ったうえで、業務や依頼をするのが本来あるべき姿だと思います。障害のある社員と働くなかで、私を含むチーム全員が、誰に対しても、配慮をするのが当たり前だと学びました」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2025年1月20日号より抜粋