人の目が気にならない半個室。オムロンでは年に一度、合理的配慮面談を行い、当事者からの要望は当事者と調整のうえ、合理的な範囲で実施する(写真:楠本 涼)

 オムロンでは面接でほとんど話せない、自閉傾向が強い大学院生からの応募もあった。過去の採用基準であれば、採用が難しいタイプだ。だが、大学院生は、学内のプログラミングコンテストで優勝するほどのハイレベルなスキルを持っていた。まずは一度インターンシップに参加してもらったところ、大学院生はすごいスピードでプログラムを書き上げ、メンバーを驚かせた。イノベーションが起きたのだ。宮地さんは言う。

「他の社員の刺激になって、チームの生産性が上がりました。正社員になった彼が開発した技術が、まもなく新商品に搭載されます」

 職場内のコミュニケーションが心配されたが、技術者同士でのプログラミング用語を使った話は十分にできた。

 宮地さんは「不得意なことをオープンに出してくれたこともよかった」と言う。採用時には、能力を発揮するためにどのような配慮を求めるか、どう成長したいかなど、会社側から事前に質問を出しておいたところ、「聴覚過敏があるので、ノイズキャンセルのイヤホンを着けさせてほしい」などと文書で返答があり、その配慮を了承した。

誰に対しても配慮を

「ただ、特に高いスキルの人材にこだわっているわけではありません」と宮地さんは言う。

 ハイレベルな技術を持つ人を求める部署もあれば、初心者でも意欲があり成長していく人を求める部署もある。これまでにニューロダイバーシティ採用で入社したのは10人ほど。今は社内で理系ニーズが多いために理系出身者の採用が多いが、文系出身者もITで活躍している。

 冒頭の田切さんはニューロダイバーシティ採用でオムロンソフトウェアに入社した。現在はITスペシャリストとしてエクセルを使った社内ツールの作成、保守などを担当している。もともと大学院では労働研究をしていた文系。システムは専門外だったが、勉強し直した。

 コミュニケーションには大きな苦手意識はない。でも、口頭や文章で強い表現だと真に受けやすい。臨機応変な対応も苦手だ。仕事の依頼は、なるべく完成形を文章で示してもらうようにしている。

みやじ・いさお/オムロン ダイバーシティ&インクルージョン推進課 障がい者雇用システムアドバイザー(写真:楠本 涼)
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個人に合わせた対応は、発達障害のある人のためだけではない