指名打者制があれば出場機会が増えそうな巨人・秋広

セ・リーグ投手は「バントでけがするリスクが怖い」

 一方で、選手には導入賛成の声が多い。日本プロ野球選手会が20年12月に選手会総会で12球団の選手会長ら25選手にアンケートを実施したところ、9割以上がセ・リーグの指名打者制導入に賛成だった。このアンケートの対象人数は少なかったが、実際に現場の選手たちや首脳陣の意見に耳を傾けると「指名打者を導入すべき」という意見が非常に多い。

 侍ジャパンでプレーした経験があるセ・リーグの投手はこう語る。

「国際試合は指名打者制じゃないですか。セ・リーグでプレーしていると、投手と対戦する時に一息つく感覚がついているので、9番まで息の抜けない打線だと疲労の感覚がまったく違います。あと、自分は打席に立ちたくないんですよね。バントをする場面で150キロを超える直球がくると指に当たってケガをするリスクが怖い。指名打者制を導入してほしいですね」

 首脳陣はどう考えているか。セ・リーグのある球団の打撃コーチは「ウチの球団は指名打者制に反対の立場だから話せないよ」と苦笑いを浮かべたが、個人的な見解としては「導入すべき」と明かす。

「パ・リーグでもコーチを務めたけど、セ・リーグに来て思ったのは、打撃が魅力だけど守備力が低いから使われていない選手がもったいないなということ。秋広優人(巨人)なんて典型的な例でしょう。一塁は岡本和真がいて、外野の守備は正直厳しい。指名打者があればもっと出場機会が増えるし、成長のスピードが上がる。度会隆輝(DeNA)もそう。打球判断など外野手としてはまだまだ物足りないので1軍に定着できないが、打撃センスは天才的です。2軍でプレーさせるのはもったいない。秋広も度会も『若いうちから指名打者で甘やかすべきではない』という意見があるかもしれないけど、試合に出てナンボの世界です。1軍で打席に立ち続けないと、なかなか一本立ちできない。スター候補が埋もれてしまうのはもったいないとは感じます」

 投手力が高いディフェンス型のチームと、野手の選手層が厚い攻撃型のチームでは指名打者制の見方が変わってくるかもしれない。投手層が厚ければ、指名打者制がなくても投手の打順で次々代打を使って継投することで有利に戦えることもある。逆に野手の選手層が厚いチームでは、指名打者制によって多くの打者を起用できる。例えばDeNAは、打撃力がある佐野恵太と筒香嘉智が左翼の守備位置で重なるが、指名打者制があれば、佐野と筒香の同時起用が可能になり、打線に厚みが増す。

次のページ
阪神番記者は「もし指名打者制があったなら…」