プロ野球の榊原定征コミッショナーが1月6日、「セ、パでルールが違うというのはノーマルな状態ではないと思う。見る立場からすると打撃活発な試合のほうが面白いよね」とセ・リーグの指名打者制(DH制)導入に言及した発言が反響を呼んでいる。セ・リーグも指名打者制導入に動き出すのだろうか。
世界各国はほとんどDH制を導入
世界各国の野球リーグを見ると、指名打者制を導入していないセ・リーグは非常に珍しいことに気づく。韓国、台湾、中南米のメキシコ、ドミニカ共和国などの国内リーグはいずれも指名打者制を採用。米メジャーリーグでは、1973年に世界で初めて指名打者制を導入したアメリカン・リーグと、導入しないナショナル・リーグとでルールが分かれていたが、ナ・リーグも2022年から指名打者制を導入した。大谷翔平がナ・リーグのドジャースに移籍した昨年、右ひじ手術後のリハビリをしながら打撃に専念してMVPを獲得する活躍ができたのは、指名打者制があったからだ。日本ではア・リーグにならって、パ・リーグが1975年から指名打者制を導入している。
セ・リーグでも「指名打者を採り入れるべき」という声は以前から上がっていた。改革の必要性を訴えたのが、巨人の原辰徳元監督だった。2019年の日本シリーズでソフトバンクに4連敗を喫した後、「DH制というので相当差をつけられている感じがある」と振り返り、「高校野球、少年野球もかわるきっかけになる。レギュラーが9人から10人に増える」とセ・リーグも指名打者を導入すべきと訴えた。だが、セ・リーグの他球団はそろって反対。23年1月の12球団監督会議では、座長を務めた阪神の岡田彰布前監督が「監督が楽すぎる。(打順に)ピッチャーが回ってくるとか回ってこないとか、そういう醍醐味がちょっとないよな」と反対。議論は進展しなかった。
投手が打席に立つことで試合の流れが変わるのは、確かに野球の奥深さかもしれない。堀内恒夫(元巨人)、桑田真澄(元巨人ほか)、川上憲伸(元中日ほか)らは野手顔負けの打撃センスでチームに貢献。現役の投手では柳裕也(中日)、森下暢仁(広島)、西純矢(阪神)らが打撃に定評がある。投手に代打を出したことで継投策が裏目に出るケースも、指名打者がないセ・リーグならではの試合展開だろう。ベンチワークや采配の妙が勝敗の大きな要素となる。