朗報! 糖尿病に効くゴルフ練習の仕方 心と体が得する話

 「糖尿病はそもそも運動不足の人がかかりやすい。そんな人に急に運動しろといっても無理な話なんです」

 と言うのは、二十五年以上、糖尿病の運動療法の研究に取り組んできた、太田西ノ内病院(福島県郡山市)の運動指導室長・藤沼宏彰さん(49)だ。

 糖尿病の運動療法としては、有酸素運動が効果的とされている。ウオーキングなどを週に三回から五回、十五分から三十分続けることで血糖値が下がり、インシュリンの働きがよくなる。だが、単調な運動は強固な意志がないとなかなか続かない。

 そこで藤沼さんらは、ゴルフの効用に着目した。

 「十人に一人が糖尿病といわれる四十代男性にとって、いちばん身近なスポーツといえばゴルフでしょう」

 糖尿病の患者たちに、昼食の一時間後、ゴルフ練習場で三十分のショット練習をしてもらった。前半はピッチングウエッジ、後半はミドルアイアンやドライバー、スプーンのショット。

 同じ時間帯に家庭用のゴルフ練習機を使って、前半十四分間をピッチングウエッジで、後半十四分間をスプーンを使って実験した。

 その結果について、藤沼さんは説明する。「心拍数が三十分間の自転車運動と同じくらい上がっているし、酸素摂取量もあまり変わらない。つまり、有酸素運動になっているということです。エネルギー消費量も自転車運動に若干劣る程度でした」

 クラブで効果も違う。

 「スプーンやドライバーのフルショットが効果的でした。それも一分間に四打くらい。少し速いペースですが、十五分から二十分くらい続ければ、糖尿病の運動療法として有効です」

 もっとも、ゴルフ愛好者からは、「狙いもせず、機械的に打っては全然練習にならない」との声もあるが、藤沼さんは言う。

 「あくまでも、これは糖尿病克服のためです。練習のうち、十五分から二十分だけは運動療法と心得てください。その時間は、遠くに飛ばそうとかコースを狙おうなどとは考えないこと」

 実際にゴルフ場に行けば、一万歩以上は歩くことになり、いい運動になる。

 「でも『十九番ホール』はいけません。終わってビールをジョッキでぐびぐび飲み、脂っこいおつまみを食べれば、効果はゼロ。元も子もない」

 いずれにしても、週三回から五回、一回十五分から二十分間のペースを守ることが大事。ただし、同じ糖尿病でも、網膜症などの合併症がある場合は注意が必要になる。

 「ゴルフもやりすぎは禁物です。くれぐれも、かかりつけの医師に相談してから取り組んでください」

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