
8000年でカネ返すバブル崩壊王の助言 心と体が得する話
「あと八千年ちょっと、私はカスミを食ってでも生きていきますよ」
還暦を過ぎているのに大言壮語するのは、東京都内で不動産業を営む小島宣隆さん(63)。
小島さんはバブル崩壊で巨額の負債を抱えてしまった全国の不動産業者の一人。借金の元金総額は約百億円。延滞利息や損害金を加えると、どこまで膨れ上がるか本人もわからない。
小島さんが借金している金融機関は八社。総額で毎月百万円余りを返済している。ある銀行からは十億円借りており、毎月の返済額は一万円、一年で十二万円。十億を十二万で割ると、「八千三百三十三年」という数字が出てくるわけである。
バブルの絶頂期、会社の年間売り上げは三千億円余り。年収八千万円の社員もいたし、小島さんも新宿・歌舞伎町で月に三千万円使ったことがある。バブル崩壊後、小島さんの通勤は運転手つきのベンツからママチャリにかわり、現在の給料は二十五万円である。
「大勢の不動産業者が逮捕されましたけれど、私は捕まらない。なぜか。返し続けているからですよ」
小島さんはテレビのバブル特集に積極的に出演し、自分の体験を語った。やがて「バブル崩壊王」と呼ばれるようになり、昨年秋には『不動産借金王裏ファイル』(情報センター出版局)を上梓した。
その直後、小島さんがテレビ朝日の「ニュースステーション」に出演したときのことである。番組の字幕に出た社名から番号案内で調べたらしく、翌日から合わせて約五百本もの電話が会社にかかってきた。
ほぼ全員が借金苦の相談で、うち四十人ほどが自殺を考えていた。消費者金融に借金がある主婦は、娘の通帳から無断で百二十万円を引き出して返済に充てた。
「娘に言いだせない。いっそ死にたい」と漏らした。
小島さんは、どの相談にも具体的に助言した。
「基本はまず『本当にすみません』と平身低頭して謝り、相手が強気のままなら居直ること。殴られそうになっても抵抗せず、その後、病院で診断書を書いてもらう。家具を壊されたら証拠写真を撮り、恐喝めいた言動はテープレコーダーで録音する。警察に被害届を出せば相手は示談に持ち込もうとし、借金の額が減る可能性もあります」
借金先が銀行なら担保物件の行使を要求し、銀行が拒めば支払い可能な金額を返し続ければいい。消費者金融や商工ローンには返済額は元金の償還に充て、利息には回さない。
「この返済方法が認めてもらえないなら、自己破産するしかありません」
と切り出せば、相手も応じざるを得ない。ただ、友人や親戚からの借金には感情の問題が絡むので有効な対策はなく、借りないのがいちばんだそうだ。
小島さんは娘の通帳に手を出した先の主婦にはこうアドバイスした。
「とにかく娘さんに打ち明け、謝りなさい。毎月一万ずつ返していけば、たった十年ですみます」