あなたの私立校信仰はだから間違っている 心と体が得する話
私立中・高人気は首都圏から地方にも広がり、「公立の復権は難しい」というのが受験業界の常識になりつつある。二〇〇二年度から新学習指導要領で公立校の授業内容が三割減らされると、ますます私立との格差が開き、公立は没落するという予想もある。
だが、教育業界に二十年以上いて、進学塾と家庭教師センターを経営、予備校でも現代文を教えている寺田義正さん(49)は、教育の機会平等を主張し、異議を唱える。
寺田さんはまず、「私立が素晴らしい」という一般論そのものに誇張が入り込んでいると言う。
「私の経験から言うと、私立人気は、一部の大手進学塾や、特定の学校のPRをそのまま信じてしまう塾や講師らが、いたずらに煽っている側面が大きい。高い費用を払い、遠くまで行かせて、すべての私立にそれに見合うものがあるのか、はなはだ疑問です」
そのうえで、「私立人気」の二大要素、「進学実績」と「学校が荒れていないこと」に、疑問を投げかける。
「進学実績は本当にその学校の教育がいいからなのでしょうか。たまたま、公立から上位層の子が流れてきただけというのが大半の実情でしょう。生徒指導は私立のほうがいいのは確かですが、私立はいじめや荒れている部分を隠すので外には出てこない面があります。それに入学後、何らかの問題をかかえて別の私立に編入しようとしても、まず受け入れてもらえません」
新学習指導要領への不安はどうか。
「たしかに私の経験でも、同じ程度の学力の子に対して、一週間当たりの授業時間に差をつけて一年間教えると、成績の差はかなり開きます。二〇〇二年問題は公立の生徒にとって深刻ですが、不足分を予備校などで補えば追いつけないことはありません」
こうした意見に対して、私立中学に詳しい森上教育研究所の森上展安代表は、
「私立にも問題はありますが、昔のイメージで公立をとらえると間違えます。公立中学では宿題が出ないところも多く、勉強の習慣がつかない。新学習指導要領で授業時間が減り、中間・期末テストもなくなると言われている。それに今は情報公開度が高い学校ほど人気が出る傾向にあり、いじめがあるのに隠したりすると、評判が下がります」
と否定的。
だが、寺田さんが強調する「コストパフォーマンス」面は説得力がある。
「私立を選ぶのは、取り返しのつかない買い物をするようなもの。高いところだと、中高の六年間で一千万円くらいかかる。公表されている入学金、授業料、施設費のほかに、制服代や修学旅行、語学研修など見えない費用がかかる。その費用に見合っていない学校がけっこうあります」