若者の存在はダイヤモンド、人材難でやめられたら困る
「いまの職場で仕事への熱意が失われてしまったとしても、自分の成長のためなら転職というチャレンジもできるはず。熱意はないままに『いまの職場にとどまる』のは自分の可能性に蓋をしているということ。そんな若い世代が3割もいて、かつじわりと広がりを見せているというのは日本社会にとって由々しき事態だと、私は思います」
今回、「静かな退職」についてアエラが行った読者アンケートにはさまざまな年代から意見が寄せられた。そこで東京都の会社員の女性(30)は、「静かな退職には共感できる」として、こう書いている。
「やる気のない上司、働かない先輩を見ていると自分が頑張るのが馬鹿馬鹿しいと思えるときがある」
「仕事を頑張っても給料が増えるわけではない。会社の仕事だけでスキルが上がるわけでもない。最小限の仕事でプライベートを充実させ、副業で稼いだりするほうが理にかなってる」
こういった傾向に荒川さんは、企業側にとっては発展のために投資できる人が減ってしまう機会損失のデメリットが大きいと危機感を持つ。
「1月の調査では『静かな退職』をいつから始めたかという問いに対し、71%もの人が『働き始めてから』と回答しています。つまり、希望に満ち溢れて入社してきても報酬や周囲の評価などの点で報われないという思いを強めるなど、きっかけが『入社後に』起きている。ここも問題です」
では企業に、何か「対策」としてできることはあるのだろうか。
「若者パラダイスの日本で、静かな退職が広がるのはある意味、当然です」
こう話すのは、芝浦工業大学デザイン工学部UXコース教授でZ世代研究の第一人者、原田曜平さん(47)だ。
「少子化が長く続き、かつ人手不足の日本。企業にとって若者は、入社して、その後も辞めずにいてもらわないと困るダイヤモンドのような存在。『静かな退職』をこれほど若者が選びやすい国はないでしょう。全体の多くが若者ではないか。ただ同じ若者の中にも格差がある。マイノリティーに『トー横キッズ』など深刻な問題がある一方、『静かな退職』は同情する必要のないマジョリティーの若者の話だと思います」