間もなく始まる受験シーズン。学校を選び塾に通い始めるなど、試験を受ける数年前からかかる時間と費用。通常の子育てに加えて受験タスクが追加される働く親の実態は。AERA 2024年12月9日号より。
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首都圏では、間もなく中学受験が始まる。筆者はここ5年ほど、中学受験を経験した家族のインタビュー取材を行ってきた。その様子は『中学受験のリアル』(集英社インターナショナル)にまとめているが、最近これまでとは少し違う“風”を感じている。
理由の一つが、共働き家庭の増加だ。中学受験が最も盛んな東京都では、都内で小学生までの子を育てる母親が働いている割合は7割を超え、うち47.8%が正社員(2022年度東京都福祉保健基礎調査)。仕事をしながら分刻みで駆け回る親は珍しくない。
都内の一般企業で管理職として働くいおりさん(50代)は、長女と次女の小学校受験と中学受験を経験した。長女は中学受験で「女子御三家」に合格。その後、難関私大医学部に進学し、次女は現在、大学付属校に通っている。それぞれ無事に合格したが、特に次女の中学受験時は慌ただしい日々だったという。
次女が入塾したのは長女も通った早稲田アカデミー。長女の時には塾弁が必須だったが、コロナ禍を境に休み時間が短縮され、塾弁は不要に。「授業の終わる時間も早くなったので助かったと思いました」(いおりさん)。ところが、次女は成績の関係で別の校舎へ移ることに。電車に乗って通わざるを得なくなり、綱渡りの生活が始まった。
朝、私立小に通う次女と共に家を出て最寄り駅のコインロッカーに塾カバンを預けて出社。次女は学校帰りにランドセルと塾カバンを駅で持ち替えて再度電車で塾へと向かう。いおりさんは仕事から午後7時半に帰宅すると、すぐさま牛丼を作って弁当箱に詰め、車で塾へ迎えに行く。午後8時45分に次女と合流し、車内で牛丼を食べさせながら午後9時半頃に帰宅。次女が風呂に入っている間に最寄り駅に向かい、ロッカーからランドセルを取り出して帰宅する。いおりさんが夕食を食べられるのは午後10時近くだったという。
「1年ほど、こんな生活を週3日やっていました」(いおりさん)