日本球界にいなくなった韓国人助っ人
かつて日本球界でも、宣銅烈(元中日)、李承燁(元ロッテ、巨人など)、林昌勇(元ヤクルト)、呉昇恒(元阪神)など韓国人選手たちが活躍した。だが、近年は韓国から助っ人で来日する選手たちが見られない。その背景について、日本と韓国でコーチ経験がある球界OBはこう語る。
「KBOリーグ(韓国の野球リーグ)はNPBよりレベルが2段階ぐらい下がります。『打高投低』で今年は20人以上の3割打者が誕生しましたが、打者のレベルが高いのではなく、投手陣のレベルが低い。これは個々の能力だけの問題だけではありません。ボールがNPBより明らかに飛ぶし、ストライクゾーンが狭いので投手がなかなか育たない。KBOでプレーしている投手陣は日本の1軍では通用しません。ファームのレベルです。特にリリーフ陣は好素材が少ない。直球が140キロ前後で、変化球もストライクが入らない。こういう投手たちが代表入りしている状況では国際試合で勝つのは難しい」
日本の数十分の一しかいない高校野球部員
韓国の苦戦の理由として挙げられるのが、選手層の薄さだ。この問題で思い出されることがある。08年の北京五輪で金メダルを獲得した後の記者会見で、李承燁が「高校野球部が60校しかない我が国が、金メダルを獲得するとはすごいことだ」と発言した。
韓国で取材する通信員は、こう語る。
「韓国は野球に限らず、高校、大学でスポーツをする学生の人口が非常に少ない。日本も少子化で野球人口が減っているが、高校野球の硬式野球部に所属する部員数は12万人以上いる。一方で韓国は高校野球部員数が4000人もいません。高校、大学で競技を続けているのは身体能力の高い一部の子供たちに限られているのが現状です。『エリート主義』に歯止めをかけ、野球をする子供たちの裾野を広げる取り組みが10年ほど前から全国各地で行われていますが、『高校、大学まで野球を続けるのはスポーツエリート』という考えはなかなか変わっていません」
日本では、学生時代に目立った存在でなくても、野球を続けることで大輪の花を咲かせた選手は多い。高校時代は無名だった千賀滉大(メッツ)、柳田悠岐(ソフトバンク)や、強豪校に入れず公立高校に進学した才木浩人(阪神)らが当てはまる。エリート至上主義の教育システム、スポーツ環境では、このような潜在能力を秘めた人材が、日の目を見ないまま消えてしまいがちだ。