〈こんなことは馬鹿げている。このテレビ放映されたスクラムに勝者はいなかった。勤勉な敗者の国があるだけだ。長い一日の仕事を終えて帰宅した何百万人ものアメリカ人が、インフレ、移民、犯罪といった日々の苦悩に対する答えを期待して視聴した〉
果たして、アメリカ国民はどう考えているのか。
ロイター通信社は、討論後、10人のswing voters(どの候補者に投票すべきか判断がつかない人)に聞き取り調査をした。そして、そのうち6人がトランプに投票するか、トランプ支持に傾いているとし、3人がハリスに投票するという結果を発表した。
ニューヨーク・タイムズ紙も8人のswing votersに調査をし、2人がトランプ支持、1人がハリス支持、残りは〈甚だ混乱している〉という回答を公表した。CNN、BBC、ウォールストリート・ジャーナルがswing votersに対して行った調査でも類似の結果が出た。
ストラッセルは同コラムでこうも書いている。
〈アメリカ人はバカではない、インフレや国境での犯罪や混乱に不満を持っている、そしてアジェンダを具体的に知りたいと思っていると考えたほうが賢明ではないか〉
ハリスは民主党の大統領候補になってから、メディアのインタビューを意図的に避けてきたように見える。テレビ討論会の前にハリスはCNNのインタビューを、副大統領候補のティム・ウォルズと一緒に受けた。インタビューでは頻繁にデスクの上に置かれたメモに目をやり、ぎこちなく答えていた。
フィナンシャル・タイムズ紙のエドワード・ルースは、ワシントンDCを拠点とするイギリス人名物コラムニストだ。私のインタビューにこう語った。
「このCNNのインタビューは、カマラ・ハリスが自信に欠け、内容を掌握することができないという悪評の典型例だった」
また、トランプについて「テレビ討論会でもハリスが経済や移民対策の質問をはぐらかしたとき、トランプは強く問い詰めるべきだった。でもハリスの効果的な挑発に乗せられて、怒りを露わにし、やるべきことを忘れてしまった」と語った。