「時短やラク家事のテクニックに取り組んだこともありますが、必要のないものだとかえって家事が増える。それよりはマトリックスなどを使って自分の家事を『棚卸し』し、不要な家事を捨てることのほうが解決につながると思いました」

ゴールを決めて達成感

 著書『家事を手放してシンプルに暮らす』(ワニブックス)が人気の田中あきさん(38)は、外資系企業に勤めるワーキングマザーだ。家事と向き合わざるを得なくなったのは3年前。長男(4)を出産後、仕事も家事もフルでこなすうち体調を崩し、職場で倒れることもあった。

「私たち共働き世代は専業主婦家庭で育った人が少なくないが、一方で女性も生涯仕事をすべきという教育を受けてきた。家事にかけられる時間にギャップがあるにもかかわらず、両方を追い求めようとするから苦しくなるのだと思います」(田中さん)

 田中さんは、母がしてくれた「理想の家事」をいったん捨て、家事によって「得たいものは何か」をとことん考えた。

「『家族の笑顔』だと思いました。私は母の笑顔が好きだった。加えて『家族の健康』。料理は得意なほうではないけれど、食事と清潔さはある一定レベルを守りたいと思いました」

 次に自分が家事にあてられる時間を計算した。「一日2時間」。その中に収まらない、優先度の低い家事は手放し、機械や外注、家族に委ねる。さらに必要以上のものを持たない、コンパクトな暮らしによって家事全体をダウンサイジングした。洗濯では浴室乾燥を利用。乾いた服はハンガーのまま隣接するウォークインクローゼットにかける。靴下もたたまない。夫は2種類しか持たないので、左右で色を履き間違える心配がないからだ。下着類は浴室脇の棚を収納場所にした。しまうのが楽なだけでなく、入浴時にいちいち他の部屋から持ってくる手間も省ける。

 夜は子どもと一緒に9時ごろ寝て、朝5時に起床する田中さん。家族が起きる7時までがメインの家事時間だ。その2時間をさらに「片付け」「夕食の具材カット」など15分単位の「モジュール」に分け構成している。

「家事の進捗状態が把握しやすいので、気持ちに余裕が持てます」(田中さん)

 毎日時間に追われ、やり残した家事にストレスを感じ、一日中モヤモヤと家事が頭から離れない。負担感の正体は、この「憂うつ感」。その捨て方を伝える、『考えない台所』(サンクチュアリ出版)は10万部を超えるベストセラーだ。著者で料理家の高木ゑみさん(31)は言う。

「家事はやり始めると際限がない。ゴールを決めることが大事です。達成感も得られる」

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