AERA 2024年11月4日号より

 鉄道好きで、『鉄道好きのための法律入門』の著書もある小島好己(よしき)弁護士によれば、正当なクレームは「主張する内容に正当な根拠があり、方法も合理的なもの」と説明する。例えば、駅係員の案内が間違っていて遠回りしてしまったことで、本来なら乗れる列車に乗れず以後の案内の改善を求めた場合などだ。

正当な根拠がない主張、過大で非合理的な方法

 一方、カスハラは「主張する内容に正当な根拠がなく、主張の方法が過大であったり合理的でないもの」(小島弁護士)。例えば、幼児を連れて自由席特急券で乗車した客が、自由席が混んでいることを理由に差額無しでグリーン車利用を求め、係員に断られても執拗に食い下がったり、「子どもがかわいそうと思わないのか」という主張をしてきたりする場合だという。

 行き過ぎたカスハラは犯罪だ。罪を問われる場合と問われない場合の「境界線(線引き)」はどこにあるのか。

 小島弁護士は「端的に犯罪の構成要件に該当するかどうか」と指摘する。

 無理難題を言って対応してもらえなかったことに対し「チッ」と舌打ちして睨みつけたり、「なんだよ」「二度と乗るかよ」など捨て台詞を吐くのはカスハラに該当する余地がある。だが、これを罰する規定が用意されていない。

「しかし、舌打ちにとどまらず、殴った場合は『暴行罪』。『お前使えねえな、バカヤロー』などと言った時は『侮辱罪』に問われ、『駅に火つけてやるぞコノヤロー』などと言った際は『脅迫罪』に当たる。暴言を吐いたり、大声を上げいつまでも執拗に食い下がり正当な業務の遂行を妨害した時は、『威力業務妨害罪』になります」(小島弁護士)

 では、実際にどのようなケースが罪に問われるのか、国交省が公表したカスハラ・暴力の事例から見てみよう。

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カスハラ事例