【事例1】

 20代の客が自動改札のエラー音がするのに突破しようとしたので声がけしたところ、一方的に「土下座しろ」等と威圧的な言動を繰り返した──。

 小島弁護士が解説する。

「『土下座しろ』と怒鳴っているだけでは犯罪は成立しないと思いますが、威圧的に繰り返し業務を妨害した場合は『威力業務妨害罪』になり得る。その際は、刑法第234条で、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます」

【事例2】

 駅長事務室で、30代の客の遺失物の問い合わせに必要事項を聴取したところ、ほぼ「覚えていない」と言われた上、勝手に個人情報を書き「これで探せ」と催促し、「遅い、早くしろ」「能無し」「死ね」等の暴言を受けた──。

「このケースでは、『遅い、早くしろ』までは必ずしも犯罪には当たらないと思いますが、『能無し』『死ね』などの暴言になると侮辱罪(刑法第231条・1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、拘留、科料)が考えられます」(小島弁護士)

 もっとも、鉄道会社も理不尽な客に黙っていたわけではない。

 JR東日本は今年4月、暴行や威圧的な言動などをカスハラに該当する行為と定義し、カスハラを行う乗客には、対応をせず、悪質と判断される場合は警察や弁護士に相談するなどとした対処方針を定めた。

「弊社の駅係員・乗務員ならびにアテンダント等に対するカスタマーハラスメントにあたる迷惑行為が発生していることを受け、カスタマーハラスメントからグループで働く社員一人ひとりを守ることを目的として方針を公表することとした」(JR東日本)

法的措置含め厳しく対応、従業員の人権を守る

 続いて5月、JR西日本はカスハラに対する「基本方針」を定めたと発表。乗客から不当な言動や要求があった場合は、商品やサービスの提供を中止するほか、悪質なものについては法的措置も含め厳しく対応するとしている。

「すべてのステークホルダーの人権尊重の取り組み(人権デュー・ディリジェンス)を進めていく中、従業員の人権を守っていくことも重要であり、その中の大きなテーマとして『カスタマーハラスメント』に着目しています」(JR西日本)

 9月には、JR北海道とJR九州がそれぞれ、カスハラに対する基本方針を正式発表。どちらもサービスの提供中止や法的措置を含め、厳正に対処する姿勢を示し、社員の働きやすさの確保につなげるとしている。

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カスハラはグループ全体で起きています