こうした各社の動きをJR連合の宮野さんは「すばらしいこと」と評する。

「カスハラはグループ全体で起きています。労組の意見を反映し、JR西日本は鉄道会社単体だけではなくデパート、コンビニ、ホテルや観光などグループ全体としての基本方針を策定し、現在その具体的な対処法などについてのマニュアル作成を進めています」

 ただし、「課題もある」と宮野さん。

「事例集やマニュアルが実際の対応や管理者からのフォローに生かされるよう、日々の対応の中で具体的な事例を積み重ね、実際に社員を守れる仕組みを構築していくことが重要です」

 小島弁護士は、各社の対応は「遅すぎたくらいだ」と指摘しながら、「会社が統一方針を打ち出したのは現場で働く従業員にとってよいこと」と語る。

「会社が統一方針を明らかにしたことで、お客に対する不合理な要求の抑制になるだけでなく、従業員も会社の後ろ盾を得て不合理な要求に対し迷いなく毅然と対応できるようになり、安心して働ける。お客は不合理な要求をせず、一方で従業員は、お客からの正当な要求を適切に対処する、という両者の対等な関係が築き上げられることを期待します」

 元JR東日本の車掌で、『乗務員室からみたJR』の著書もある関大地さんは言う。

「車掌や鉄道員の対応に不満が出るのは、仕方がないことかもしれません。けれど、自分のストレスのはけ口にはしないでほしい。同じ人間として“お互い様”であり、思いやりを持って接してほしい」

 ただでさえ、ストレスが多い時代だ。しかしそんな時こそ、少し時間に余裕をもって、優しい気持ちで、鉄道を利用してほしい。(編集部・野村昌二)

AERA 2024年11月4日号より抜粋

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