学習は、勉強した時間の長さより、いかに集中して頭を回転させたかが大切。人間の頭って、例えれば、「ぬるま湯に長~くつかる」よりも「ものすごく熱いお湯にさっとつかる」やり方のほうが賢くなるのです。つまり、100ページの問題集を毎日ちまちま1ページずつ解くよりも、毎日10ページずつやって10日間で仕上げ、もう10日間で2回目をする、というほうが人を賢くするのですよね。
あと私は、教科書や参考書、模試の結果や過去問など必要な資料がすぐ取り出せるように、ファイリングは徹底していました。その他の家の片付けはほぼ適当でしたけど(笑)。また、睡眠は大切なのでしっかり寝ていいから、起きている時間は有効に使おうよ、といつも話していました。そのためには、起きたときに「今から何をしよう」などと考える時間は無駄なので、寝る前に起きてやることを決めて、その問題集とノート、筆記用具を机の上に出して寝るように、とも言っていました。
■考えなくても答える
──いつ頃から東大を目指して学習習慣をつけさせましたか?
私は「東大を目指してほしい」と思ったことは一度もないのです。ただ、学校は楽しく通ってほしかったので、授業がよくわかること、テストの点数がいいということが基本だと思っていました。3、4歳では基礎的な計算力をつけるのが大事だと、一桁の足し算を徹底的に鍛えました。考えなくても答えが出せるよう、鉛筆の動きを止めず流れるように解けるまで何度もやり直させたのです。厳しいようですが、基礎学力を徹底的に身につけたことは、受験に大いに役立ったと思います。学習は積み重ねなので、基礎がいい加減だと先が学べないんです。
それに子どもたちは、幼少期の学習で「勉強は真剣に取り組むべきものだ」と身に染みたらしく、「学びに対する畏敬の念」を持っていたようです。
4人とも中学受験をしましたが、夕食後7時半きっかりに一斉にリビングで勉強を始めることにしていました。はじめはおっくうそうでしたけど、全員一緒だから「今日は勉強したくない」なんて言い出せる空気じゃない(笑)。ただ、私は「勉強しなさい」と口うるさく言って雰囲気が悪くなるのは嫌だったので、「はい、みなさん~。7時半ですよ~」と言いながらパチパチと手を叩いていました。
子どもって勉強はしなければとは思っていますから、渋々でも一旦始めれば集中するものなのです。勉強は苦行のようにやるものじゃない。淡々と、息をするようにやることが大切なのだと思います。でも、あとで聞くと「あの頃のママのパチパチの音は、うざかったわ~」と言っていましたけどね(笑)。
(構成/ライター・玉居子泰子)
※AERA 2021年6月7日号より抜粋