古賀茂明氏
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 衆議院議員選挙で与党が過半数を大きく割り込んだ。

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 今後の政局を見通すことは、現段階(28日昼)では難しいが、ここでは政局ではなく、政策の話をしてみたい。

 今回の選挙では、裏金問題が最大の焦点だった。

 一方、政策の議論はどうだったかと言えば、これまでと同様、各党は本音を隠して、聞こえの良い政策を公約に並べただけだった。本来は、マスコミが政党や候補者に問いただし、矛盾点や課題を洗い出して有権者に伝えるべきなのだが、実際には、マスコミ報道は、各党の表向きの公約のほんの一部をさらに簡略化して伝えるだけに終わった。新聞でさえ、各党に突っ込む取材はしていなかった。

 そうした各党の公約や党首討論などを見ていて気づいたことがある。

それは、政治家、官僚、有権者の間に矛盾した「常識」と「タブー」があるということだ。それはあらゆる分野に存在するのだが、ここでは、社会保障と税について例を挙げてみよう。

 今回の選挙では、国民の最大の関心事は自分たちの生活に関わる問題だった。

 各党もそうした国民のニーズは百も承知なので、社会保障や少子化対策などについてバラ色の明日が待っているかのような政策を羅列した。

 もちろん、国民も馬鹿ではない。全部実現するとは思わないし、それだけの給付を約束するからには、どこかで国民負担となって跳ね返るのだろうと薄々感じている。

 しかし、一方で、今何かもらえるなら、とりあえずもらっておこうと考えるのが私たち国民である。将来の負担に付け回しされる国債発行が原資だとわかっていても、「そんなことはやめるべきだ」と考えて、むやみに給付を提示する政党には投票しない、という行動にはならない。

 そして、厄介なことに、人々の要求は千差万別だ。広く支持を得るには全ての人に喜んでもらえるように政策を並べなければならない。しかも、そのメニューは、他党よりも魅力的でなければならないのだ。

 各党の公約のごく一部を並べてみよう。基礎年金受給額引き上げ、医療介護従事者の賃上げ、高校生までの医療費無償化、年収の壁の見直し、社会保障負担の引き下げや上限設定、低所得世帯への給付、児童手当の所得制限撤廃や支給額の拡大、大学教育費負担軽減ないし無償化、出産費用無償化、公立校の給食費や授業料無償化、など国民の歓心を買うための政策が並ぶ。今後の国会審議では、各党が補正予算や来年度予算・税制改正などにさまざまな要求を盛り込もうとするはずだ。

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増税は議論の余地なく「悪」とされる