立憲民主党が触れたがらない「マイナンバー」
金融所得課税を強化すると言えば、株が下がるのは当然だ。しかし、いわゆる1億円の壁(年間所得が1億円までは全体の所得にかかる税金の比率が上昇するのに、1億円を超えるような富裕層は、金融所得の所得税率が一律約15%であるために、全体の税負担率が減るという現象)という不公正税制を放置するのは決して正しいとは言えない。
この話を「金融所得課税強化」という形で取り上げるのではなく、富裕層優遇税制の是正として、できれば、金融所得を他の所得と合算して課税する総合課税にすることを目標にすればより支持が得られるのではないだろうか。NISAなどの少額投資についてはもちろん、非課税にすると言えばすむ。
この新しいタブーは、一日も早くなくして議論を始めるべきだ。
もう一つ、取り上げたいタブーがマイナンバーだ。特にマイナンバーカードは依然として不人気だ。取得率は上がったが、健康保険証とのリンクが進んでいない。リベラル層では、マイナンバーカードというだけで即拒絶という人が多い。
マイナンバーカードは確かに色々な問題がある。そもそもカードなどではなくスマホリンクにしてもらいたかったという人は多いだろう。
しかし、カードではなく、「マイナンバー」そのもの、あるいは、それと類似した国民一人一人を特定した番号などで紐づけて行政サービス提供のために利用することは絶対に必要だ。特にIT技術の進展で、これをうまく使えば、行政の効率化や国民の利便性向上だけでなく、公正なサービス提供や国民の間の格差是正への活用、さらに脱税や政治資金規正法違反や不正診療などの不公正な行為を摘発・排除するためにも非常に有効だ。
とりわけ、立憲民主党が掲げる給付付き税額控除(減税を行う際に、所得が低い人や所得がない人には減税では十分な控除に届かないため、その不足分を直接給付する制度)を行うには、各個人の資産や収入を総合的に把握することが必須である。立憲民主党は、この制度の具体的導入方法にあえて触れていない。マイナンバーを使いたいのだろうが、それを言うと、彼らの支持層であるリベラル層が反発するので、言い出せないようだ。
これは大変不幸なことだ。マイナンバーを低所得層支援に使い、富裕層や権力者監視にも使うとなれば、むしろ国民は喜ぶはずだ。説明に失敗すると炎上すると恐れていては、国民のための政治は実現できない。「タブー」を廃して、マイナンバーを活用した給付付き税額控除などを実現すべきだ。
政局は大きな変動期に入ったようだが、むしろこうした時期だからこそ、あらゆる分野における過去の「常識」を総点検し、「タブー」を乗り越えて、真に国民のためになる政策実現のために議論を急いで欲しい。