官僚か大企業というイメージが強い東大生の就職先だが、新興勢力が台頭している。コンサル業界だ。なぜ東大生に支持されているのか。AERA 2024年10月21日号より。
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東大生の就職先といえば、中央官庁や大企業というイメージが強い。実際、東京大学新聞社が毎年発表している学部生・大学院生の就職先ランキングを見ると、民間企業の就職先上位は長年、旧財閥系の銀行や商社、老舗の大手メーカーといった、国内で知名度の高い日本の大企業で占められていた。
ところが今は、これらに交じって新興勢力が台頭している。
直近2023年度卒の学部卒生の就職先トップ3を挙げてみよう。1位がEYストラテジー・アンド・コンサルティング、2位がアクセンチュア、3位がアビームコンサルティングという顔ぶれ。正直に明かすと、50代の筆者にはほとんどなじみのない会社ばかりだ。いずれもコンサルティング企業だという。
他にも、上位20社に過去10年で初ランクインした5位のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー、13位のボストン・コンサルティング・グループ、日本総合研究所などを含め、東大生の「コンサル志向」が明白に浮かぶ。多くがグローバル展開している外資系だ。
ちなみに、大学院修了生もアクセンチュアが3年連続トップ。採用人数も前年から8人増加して49人となり過去10年で最多。2位の野村総合研究所も前年から倍増するなどコンサル人気が顕著だ。
コンサル志向が顕在化
「コンサル志向が顕在化したのは10年代の中盤以降です」
こう指摘するのは、東大OBでJX通信社(東京都千代田区)執行役員の衛藤健さん(26)だ。衛藤さんは16~20年、東大新聞に在籍し、就職先ランキングの調査・集計にも携わった。東大生のコンサル志向の背景についてこう解説する。
「社会でキャリアやスキルを磨くファーストステップとして、コンサルが有力な選択肢になっていると考えています」
終身雇用や年功序列が崩壊しつつある日本。リクルートワークス研究所が22年に実施した大手企業の若手社員を対象にした調査によると、10年以内に退職を考えている若手社員が約74%に上り、今の会社に20年以上勤めたいという人は約26%だった。若い世代ほど転職を前提に「いかに次のキャリアを選択できる権利を獲得し続けられるか」が新たな「安定」の定義になりつつある。
だとしても、東大生はなぜコンサル業界を選ぶのか。20年に東大新聞とNewsPicksが東大生を対象に行った調査からそのヒントがうかがえる。