AERA 2024年10月21日号より

 民間企業への就職を希望する約200人のうち、「コンサルティング・シンクタンク」を志望するのは約16%で、「IT・通信」の約17%に次ぐ2位。金融・証券、食品、メーカーなど他大学の就活生に人気の業界をしのぐ支持を集めていた。

 コンサル業界の志望理由で目立ったのは「能力があれば相応の収入を約束され、また転職もしやすい」「自己の成長の機会がある」「転職ができる」といった回答。ほかに「いろいろな業界に携われる」「BtoBを知る(ことができる)」「大企業の経営課題解決に携わることができる」といったコンサル業務のイメージも浮かんだ。

 つまり、さまざまな業種や業界に転職後も幅広く応用可能なスキルを身に付けられる──と考えた結果といえそうだ。この志向はどのような意識や価値観によって支えられているのか。

リスク回避の意識

 人生にとって安定と挑戦のどちらが重要かを聞いた設問では、49.5%が「挑戦」を選択し、「安定」(27.7%)を大きく上回った。また、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用のどちらが自分に好ましいと思うか聞いた設問では過半が「ジョブ型が好ましい」(55.6%)と回答した。衛藤さんはこうしたアンケート分析から見えてきたのは、東大生の「新たなリスク回避」意識だと指摘する。

「多くの東大生が目指すのは、同じ大企業で一生安泰という意味での『安定』ではなく、ジョブ型雇用における『新たな安定』です」

 メンバーシップ型が中心だった日本の雇用慣行にジョブ型が浸透しており、東大生はこの変化を敏感に察知している。これまでの日系大企業的メンバーシップ型雇用のもとでは、ベースとなる給与・待遇が年功序列で決まり、その個人差は大きくなかった。

 一方、ジョブ型雇用ではベースとなる給与・待遇は年功序列で決まらず、能力や技能で決まる。個人差も必然的に大きくなる。その中でより良い待遇を得るためには、個人としてリスクをとって挑戦するしかない、というわけだ。衛藤さんは言う。

「伝統的な日本企業ではその挑戦が難しく、忌避感を覚えていることの裏返しとして、外資系を含む『コンサル志向』が顕在化した、といえるのではないでしょうか」

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