秋の行楽シーズンに突入した。今年もどこかに行きたいが、円安で海外はハードルが高い。そんな時こそ、列車に揺られ日本を楽しみたい。フォトライターの矢野直美さんがおススメする鉄道3選を紹介する。AERA 2024年10月14日号より。
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日本最大級の釧路湿原が黄金色に輝く。その間を、ガタンゴトン列車が走る。
「大地が錦秋に染まり、秋の空気は澄んでいるので本当にきれいです」
楽しそうに話すのは、鉄道旅を愛するフォトライターの矢野直美さん。「元祖・鉄子」としても知られる矢野さんが、今もっとも乗りたい「秋の鉄道」としてまず挙げたのが北の大地を走る「JR釧網(せんもう)線」だ。
東釧路(北海道釧路市)~網走(同網走市)間、全長約166キロ。一本の鉄路が釧路川に寄り添うように続き、北海道らしい雄大な景色を目いっぱい楽しめる路線だ。なかでも秋を感じることができるのが、湿原の車窓からの眺めだという。
一つ目の東釧路駅を出た列車は、約20分後、釧路湿原の中に入っていく。車窓いっぱいに広がる湿原は、夏の生い茂ったグリーンではなく黄金色に輝く。
車窓は変化に富む。
野上峠と呼ばれる標高326メートルの峠を越えるあたりでは、湿原は赤や黄色の流れる美しいグラデーションを描く。
やがて列車は、オホーツク海に沿って走る。駆け抜ける列車の車窓からは、海が望める。
「オホーツク海を赤く染めた、夕焼け空が忘れられません」
日本の里山の原風景
次に矢野さんが挙げるのは、秋田県を縦に貫く「秋田内陸縦貫鉄道」。鷹巣(秋田県北秋田市)~角館(同仙北市)間、約94キロの第三セクターだ。
「名前が示す通り、山間を縦貫していく鉄道なので、本当に秋はどこも紅葉が綺麗です」
1両または2両編成の列車が紅葉に染まる鉄橋をいくつも渡り、田んぼが広がるのどかな日本の里山の原風景の中を走る。
特に絶景ポイントは、途中の阿仁(あに)マタギ駅(同北秋田市)と前田南駅(同)の間。列車は森の中を走り、車窓の両側は紅葉一色。そして、阿仁川に架かる大又川橋梁(きょうりょう)を列車が渡る時、鉄橋がまるで紅葉に囲まれているようなロマンチックな光景が広がる。